白虎草紙
『遙か』の白虎組についての四方山話、SSなどです。

2007年08月30日(木) 「街のあかり」 (映画ネタバレ有り)


 

渋谷のユーロスペースに、映画を観に行った。


アキ・カウリスマキという、監督の映画で。

フィンランドの、ヘルシンキが、舞台となっていた。




けして、大きな話では、なかったのだけれど。

何もかも、控えめで、静かであったけど。



テーブルに、落とされた、花瓶の影までが。

見る者の、心へと、そっと、染み入った。






ただ、独りで生きている、主人公の青年。


いくたびも、裏切られ、
けれどなお、誠実に、生きている男が。



古ぼけた、テーブルで、コーヒーをすすって。

横の、窓から入り込む、陽に、目を向ける。




そこに、ひと言の台詞も、説明もなくても。


その、画面を見る者は、みな、受けとめる。


それで、充分であるのを、見ている者は知る。


それ以上、語っては、うそに、なることを。







最後、私は知るよりも、先に、泣いていた。


筋立てに、気付くより、涙が先に来た。





わけもなく、泣くという、言葉があるけれど。


この今が、そうだって、泣きながら思った。








何に、涙があふれたか、今も、わからない。


けれど、心が知ったなら、多分…それでいい。


















 


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桂子 [HOMEPAGE]