オリンピックのカーリングに魅せられた人は、けっこうたくさんいるのではないでしょうかね? 私もその一人です。 で、噂の映画【シムソンズ】を見てきました。 はっきりいいます。おすすめです! もうおしまいになる映画館もあるようなのですが、ぜひ、足を運んで見てほしいです。
実に爽やかな青春ドラマになっていて、王道まっしぐらなので、安心してみれます。 ちょっと『うん?』なところもあるのですが、破綻が少ないまとまった映画になっています。 そして何よりも難しいことを考えずに爽やかな気持ちになれるところがいいですね。 カーリングの魅力もたっぷり詰まっていて、ルールなどもわかりやすく解説するシーンもありますから、全然知らなくても大丈夫です。 ぜひ、若者に見て欲しい映画ですが……おじさんおばさんもノスタルジーにひたれていいですよ。
王道ストーリーというのは、ある程度展開も起きうることも決まっているし、キャラクターもだいたい性格が決められてくるんですよね。 そこで、どのようなことを埋め込むか? ってところが問題だと思うのですが、この作品には実にうまく導入されていたと思います。 それは、オープニングの主人公が抱く未来像。 かつて、妹がこの近くで高校時代を過ごした事がありまして、その時の悩み相談を思い出してしまいました。 『将来に夢が持てない』なんですよね。 当時私はもう大学に行っていて、親の転勤について歩く事はなかったのですが、妹はそうではなかった。 街全体が同じ住所で大丈夫という小さな街で、しかも楽しめそうな場所も何もない。 いいなあんな自然がいっぱいで! と言えるのは、都会にいるからだと思えるんですよ。 寒々とした寂しい景色は、大自然と喜ぶよりも過酷ともいえるわけで。 高校で転校を余儀なくされ、友達と別れてきた先には、海くらいしかないところ。遊びたい盛りの妹には、かなり辛くてホームシックの毎日だったようです。 家業を継ぐか、大学へ入るか、女の子なら信金にでも就職できればおめでたい。この街には何もない。 そう映画の中で主人公は訴えるけれど、まさにそれはそのとおりだと思います。 でも、今の若者は、大都会で何でもあるところにいても、同じような虚しさを味わっているような気がします。 何か煌めきたいけれど何をすればいいのかわからない。で、親と同じことをするか、それもいやだから何かを見つけるまでは独り立ちしないか……。 どこにいてもどんな立場でも、10年後の自分を想像したら、とても不安になってしまうのが人間なのではないかな? と思います。特にこれから大人になる年代は。
シムソンズの女の子たちは、本当に普通の高校生で、カーリングを始めたわけも「ただあこがれの人に近づきたい」という不純な動機から。 ふだんは街でただひとつしかない喫茶店で流氷ソーダを飲んで友達とだべっている高校生。 しかも、このチーム名『シンプソンズ』と付けようとして間違えてしまったというそそっかしさ。 「親一人子一人だから母を置いて都会には行けない」だろう主人公の和子。 「大学進学を親に期待されている」おそらく本人もとりあえず大学へ行って未来を広げたいだろう史江。 「家業の酪農を手伝っていて友達もいないネクラ」の菜摘。 「小さな頃から天才少女と言われて、勝つ事ばかりに執着するようになった」美希。 4人の個性もキラキラと光り、しかも「ああわかるよ、こんな感じ」と思わせるところが微妙なのです。
個人的に気に入っているのは、美希役の子の投球ホームの美しさでしょうか。一番はまっているように思われました。しかも、視線の送り方なんか、本当の試合を見ているようです。 経験者なのかと思いましたが、撮影のために一生懸命練習したようです。 あと、菜摘役の子。どこかでみたことがあると思ったら、妖怪大戦争に出ていた川姫だったのですね? 本当にかわいくて役もぴったりはまっていました。 カーリングよりも勉強をとった史江の家に行って叫ぶ台詞が良かったです。 普通、ダサダサな青春ものだったら、「やめないでガンバろうよ!」となると思うのですが。 「ありがと、私のこと見つけてくれて」っていうのは、何とも不思議で、彼女の優しさ・素直さを感じさせるいい台詞でした。 それに答えられない史江が、最初はカーテンを引き、最後には電気まで消してしまうところが切なかったです。
実は、何カ所か涙が出てしまったところがあるくらいです。 感動……っていうよりも、何か清々しくてすっきりする気分で……ですね。 できるだけ早く見て欲しいのは、やはりオリンピックの余韻の中で見て欲しいからです。小野寺選手や林選手の顔が重なって見えてしまいました。 なお、主人公役のモデルは小野寺選手ではなく、噂によると菜摘だそうです。 性格とかはアレンジがあると思いますが、思わず「おばあちゃん、見ている〜?」の小野寺さんを思い出しました。 菜摘ちゃん一家は、家族で酪農をがんばっているところが映画からにじみ出ていて、若い子にはかわいそうな労働にも見えますけれど、家族愛も感じられるんですよね。 お父さんが「あのスイーピングは俺が教えたんだぞ」と、隣の人に誇らしげに言うシーンが印象的でした。 ぜひ、続編を作ってもらい、ソルトレイクまでの道を映画で見せて欲しいですね。
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