|
|
■■■
■■
■ 彼女の日記(お題:05)
※「時と想いを刻むもの」番外編 ↑タイトルクリックで、小説に飛べます(別窓)
彼女の日記
私がその日記を見つけたのは、母の葬儀が終わり、彼女の部屋を整理していた時でした。 父と共用の寝室とは別に、主に書斎と化していた彼女の私室。その書棚の間にひっそりと挟んであった古びた、日記帳とも言えない大学ノート。好奇心に駆られて、そっと開いてみました。
独りで暗闇に居た時、手を差し伸べてくれたのは貴方。 その手をとってもバチはあたらないでしょう?
その一文を見た瞬間、胸に走った鋭い痛み。なぜあの二人を取り巻く空気が何とも言えず穏やかで、自他共に認めるおしどり夫婦だった理由が如実に表現された言葉だった。 母がどんなに父に救われ、愛していたのか、父がどんなに母を救い、大切に想っていたのか、再度認識させられた。 母の死を看取ってからも流れることのなかった涙が、重力に逆らうことなく溢れ、大切な日記にいくつもの小さな染みを作る。 『どうして……』 母が倒れた時、父が言ったのはその一言だけだった。 手術で健康な身体を取り戻した母。なのにその母はもうこの世に居ない。 『いつか、日記を届けに行くから、また交換しよう』 棺を閉じる前の父の言葉が、耳から離れない。 (今も、日記を書いてるのだろうか)
独りで暗闇に居た時、手を差し伸べてくれたのは貴方。
日記の一文が頭を過ぎる。まるで母が背中を押しているようだ。 私は、開きっぱなしだった日記を閉じると、ゆっくりと、それでもしっかりと立ち上がる。涙を拭きながら部屋を後にした。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「時と想いを刻むもの」の番外編 05.独りで暗闇に居た時、手を差し伸べてくれたのは貴方。 その手をとってもバチはあたらないでしょう? 二人の子供(苦笑)本当は別の候補もあったんですが……こっちで。 久々の更新。なのに舞架殺してすみません(土下座)
お題9個目!次はいつになることやら(滝汗)
2004年04月16日(金)
|
|
|