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■ 失恋
髪を切った。理由はなんともベタな失恋だ。 付き合って、何年経ったかなんてあまりにも馬鹿らしくて数えてもいないが、ただ髪を伸ばし続けてた。 この髪の長さの分、アイツへの想いが詰まっているのかと思うと、嫌悪感まで抱いてしまいそうで、急いで美容院へ駆け込んだ。「短く」それだけを願った。 「終わりましたよ」 そう言われて覗いた鏡に映った自分を見て、思わず顔が綻んだ。 昔の自分に戻ったみたいで、歩けば何だか気分が軽かった。ふわりと流れる風に、首筋が寒い気がしたのは、あえて無視した。
次の日、私の顔を見たアイツが、一瞬驚いた顔をしたのに、少し心が躍った。 「どうしたの?」 心配して聞いてきた友人に、 「失恋した」 そう答えたら、軽く頭を叩かれた。 学校からの帰り道、アイツが女の子と歩いてた。それを見た瞬間、私は逃げるように走り出した。 家に駆け込んで、鏡に映った自分を見て、堰を切って流れ出た涙に、心に浮かぶのは悔しさだった。 どんなに髪を切っても、涙を流しても、頭が少しだけ軽くなるだけで、心の重さを思い知らされて、頭も心も痛かった。 (……分かってる) 私が、この空間から消えて無くなりでもしない限り、アイツへの想いは消失しないし、今の私のはそれができないことも。 (分かってるけど……) この痛みを消すには時間をかけるしかなくて、私がきちんと自分の中で決着をつけて、消化して、昇華させなきゃいけないことも。 (分かってるのに、) もう、誰かに手を伸ばすことしかできないんだ。
無糖ブラックのつもり(汗)
2005年02月05日(土)
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