くじら浜
 夢使い







冬の風景   2003年12月07日(日)

昨日歩いた道を
今日は左足から踏み出す。

いつも見る風景は一歩遅れで溶けていく。

昨日は空が焼け
今日は葉が舞い
そして明日に溶けていく。






光を受ける   2003年12月03日(水)

太陽を直視して
そしたら飛び散った。

光線を浴び
朱に染まった液体は
血管に還り、
めぐった液体は
ついた地に落ち
根っこになった。

冬の光は壊れそうで
ここで這いつくばって
待ちましょう。






午後4時17分の夕焼け   2003年12月02日(火)

気がつけば西の空低く
オレンジ色が燃えている

多摩川の水はまだ青く
東の空もまだ青く
斜めに延びる電線を境目に
西の空だけが燃えている

少しずつ少しずつオレンジは闇に溶け

5時20分
頭上わずかに白い半月が光る。






墨汁に染まった日   2003年11月29日(土)

中学1年の時に、体の不自由なクラスメイトがいた。

子供というのは残酷なもので、この人は自分たちとはどこか異なるな・・と思った瞬間、その人を好奇の目で見たり、それが複数になると苛めというはっきりとした形になっていく。
大人の陰湿なそれとは違い、直線的な苛めである。
彼の場合も例にもれず、少なからず苛めにあっていた。
言葉での苛めであったり、ちょっとした嫌がらせであったり・・

でも元来明るく気の強かった彼はそういう目にあった時、苛めた奴を不自由な足取りで追いかけたり、おぼつかない口調で言い返したりしていた。

僕は彼を苛める他の人たちの気持ちがどうしても理解できず、苛めの輪には入っていなかった。

  ある人が彼に聞いた、
  「君はこのクラスで一番誰が好き?」
  「・・・じゅんぎが一番好き」
  と彼は答えた。

彼から「好き」といわれた僕はみんなからバカにされた。
でも僕は素直に嬉しかった。
このクラスの誰でもなくこの僕を彼は一番好きなのだ。
とても嬉しかった。


ある夏の日、
習字の時間に彼が突然暴れ出した。
たぶん積り積った鬱憤が一気に爆発したのだろう、顔を真っ赤にして大声で叫びながら暴れ出した。
周りのみんなはあっけにとられたり、驚いて教室の隅に駆けていったり・・
しかしだれも止めようとはしない。

僕は後ろから彼の手を獲った。
彼に好かれている僕が止めたら彼もおとなしくなるだろうと思ったのだ。
しかし・・
彼は振り向きざま、さっきよりも更に顔を紅潮させ僕に罵声を浴びせ、泣きながら腕をブンブン振りまわし、その度に持っていた筆の墨汁が僕に飛びかかってきた。

僕はかまわず彼を思いっきり抱きしめ、彼が暴れ止むのを待っていた。
彼は尚ももがきながらも徐々に落ち着いていった。

教室の床と机は墨汁で真っ黒に染まり、
僕の顔と制服も真っ黒に染まった。


僕は・・
ショックだった・・
何故、彼は僕にまで向かってきたのか



つい最近、
この出来事を友人に話した。
そしたら友人はこう答えた、
「よかったね、じゅんぎ。彼はじゅんぎだから向かってきたんだよ」

思いがけない言葉だった。

そうだったのか
僕だから向かってきたのか


長年痞えていた物が取れた一瞬だった。






poko   2003年11月28日(金)

あったかいね嬉しいね
ふたつのお茶わんよっつの手






染まる世界   2003年11月24日(月)

真っしろな空中に朱の絵の具を落とし
波紋が少しずつ静かに広がるように
僕の血もトクトクと宇宙に脈打ち
その振動はまた僕の細胞に戻ってくる

あらゆる生命は僕の中にあり
それは日々進化し
それぞれの循環作用は絶え間なく
振動と波紋を繰り返す





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