くじら浜
 夢使い







わきゃしま   2006年11月08日(水)

ぅじん島やぬくさ
ぬがぬくさ
なちかしゃ唄ぬ
なちかしゃしゃみぬ
天てぃだうがみ
ゆらいゆくらいうどぅりょうや

ぅばん島やかなしゃ
ぬがかなしゃ
わらべやあしび
とぅじうとぅわやっくゎ
夜ね月うがみ
むんかんげ

あしゃぬてぃだや海ん
きぬん月や山ん

きょらん島やぅじぅばんや
うむいやてぃだ月
くぅまんあん島



じいちゃんの故郷はどうしてこんなにあたたかいんだろう
懐かしいシマ唄とそれに併せたサンシンの音色が
いつもなり響いているからあたたかいんだろう
太陽のもと大人達は浜に下り
酒を飲み交わしてその調べでいつまでも六調を踊っている

ばあちゃんの家はどうしてこんなに愛しいんだろう
子供達はばあちゃんのそばで遊びまわり
父さんと母さんは静かにそれを見守り
縁側から射す今夜の満月に照らされて
いつも子供達のことを想っている

あしたもまた太陽はあの海から昇って
そしてその下で唄い踊るだろう
昨日の月はまたあの山から顔を出し
そして子供達を照らすだろう

美しく懐かしくて愛しいぼくの故郷は
おじいちゃんとおばあちゃんがつくった故郷
月と太陽がつくった島









立冬   2006年11月07日(火)

雨が去ったあとに強い風が吹きぬけた
立ちこめた雲を一瞬で蹴散らし
僅かに焼けた空は徐々にオレンジを増していく
青とオレンジの境目には
四角い箱から延びた一本の突起物
誇らしげに赤く点滅させながら
オレンジは少しずつ下降し
青は次第に暮れてゆく
冬はいつだって突然やってくるんだ








そら   2006年11月06日(月)

いつも宙を飛んでいたあの時
いつしか飛ばなくなったのは
翼をなくしたのではなく
飛ぶ宙を見失ったから
夢の続きを見なくなるように
雨の雫を追いかけなくなるように
ぼくたちはいつか宙を飛ばなくなった








11月の声   2006年11月03日(金)

ススキの茂る畦道の先
脇を流れる小川に泳ぐ
天に飛ぶトンボは高く
揺れ動く染まった木葉
対岸を歩くきみは言う








   2006年10月30日(月)

手が溶けるくらいに赤く焼けた太陽を掴みたい
傷痕が焼けただれるくらいに

細胞が細かく千切れるくらいに
沸騰した塊と同化するくらいに
掴んだ手が再生するくらいに








刻むこと   2006年10月29日(日)

いつも思うのはあの海の深さ
記憶の欠片が幾層にも重なり
それは夢をあわせるように
静かに沈みゆく







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