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その宇宙 2007年06月05日(火)
君の宇宙に会いにいったら 君はまだ眠っていたから ぼくは君を起こさずに また会いに来るよ と 静かにささやき ぼくの宇宙に戻ったんだ
ぼくの宇宙は 深い深い森の中にあるんだ
ある日 その覆いつくされた木々の わずかな隙間から浸入してきた 一本の光が君だった
だれもくるはずのない ぼくの宇宙に迷いこんだその小さな光は とまどったように辺りを見まわし そして少し考えこみ しばらくして 負傷した足を引きずるように歩きだした
ぼくは黙ってその様子を見ていたけど 思いきって話しかけたんだ
こんにちは
突然の声にびっくりしたのか 一本の光はそのしゅんかん影になり そして静寂の森はまた闇にもどったんだ
それが君との初めての遭遇
君の宇宙は 君自身の意識の中にあったね
ぼくは君の光の残像を追いかけて それはそれは窮屈な細胞の道を歩いて 君をさがしたよ
途中なんかいか軌跡を見失ったけど 不思議なことに ぼくは君の宇宙にたどりつける自信があったんだ
君は偶然ぼくの宇宙を見つけたけど ぼくが君の宇宙に行くのは 必然だったと思うんだ
細胞の道はいつの間にか 切り立った崖になり その断崖の上に君がいた
君の宇宙にたどりつくまでに ぼくは二本の肋骨を折り そして片目を失ったんだ
こんにちは
と君が言った これが君との2回目の遭遇
つづく。
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