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2002年06月26日(水) 敬愛するピアニスト…

私が敬愛するピアニスト、ジャン=マルク・ルイサダ先生が今年も来日されます。

私が、ルイサダ先生の演奏に初めて触れたのは、1985年のショパンコンクールのドキュメンタリーでした。
その直後に来日された時から、ずっと、来日される度に演奏会に足を運び、1996年には、とうとう、ルイサダ先生のレッスンを受けるチャンスを持つ事ができました。
この経験は、私にとって、とても大きなものになりました。
敬愛するピアニストのレッスンを受けられて幸せだった…というだけでなく、自分の未熟さが痛いほど分かり、その後の勉強に繋がる手掛かりを得た…という意味でも、大きな大きなものでした。
その後、縁あってルイサダ先生と同門だった先生に巡り合うことができ、勉強を続けるにつれ、ますます、その演奏の素晴らしさがわかり、敬愛の気持ちは深まるばかりです。

ルイサダ先生の演奏の魅力は、数多くありますが、一番の魅力は、音楽のあたたかさと生命感でしょうか。
難しい顔をして聴くクラシックではなくて、聴いていると思わず微笑んでしまうような、聴く人を幸せにする演奏なのです。
さりげない旋律でも、まるで、音楽そのものがその場で生まれたかのような活き活きしていて、その為、心の奥深くまで入り込んで来ます。

また、音の美しさも格別です。
明瞭で、透明感があり、それでいて冷たさは微塵もない…。
理想的な音色です。

そして、レガートの天国的な美しさ。
ピアノって、ここまでレガートで弾けるものなのだ…と、聴くたびに新鮮な驚きと喜びがあります。

生の演奏を聴くたびに、音楽に包まれる幸せを実感します。

今年になって発売された、ハイドンのピアノ協奏曲・ピアノソナタ、モーツァルトのピアノ協奏曲・ピアノソナタ、そしてヴァイオリンとのデュオによるフランスの名曲の数々など、定評のあるショパンだけに留まらず、幅広いレパートリーも魅力です。

今年の秋の来日では、東京、名古屋、大阪での公演をされるようです。
今のところ、リサイタルが東京だけなのが残念ですが…。

興味がある方は、是非、足を運んでみてください。
詳しい情報は、下をクリックしていただくと見られます。

ジャン=マルク・ルイサダ来日公演


2002年06月18日(火) 『ゆびのたいそう』

『ゆびのたいそう』1〜3 田丸信明編 (Gakken)

導入期というのは、覚えること、身につける事が沢山あり、指導者にとっても生徒さんにとっても、なかなか大変な時期です。
音符(これにも音高と音価の両方があります)は読めるようにならなくてはならないし、鍵盤の位置も覚えなくてはならない。
指番号も覚えなくてはならないし、指が独立していないこの時期には、動かすだけでも大変です。
そして、手の形や姿勢に気をつけて両手で弾くためには、手元を覗き込まずに弾くブラインドタッチのテクニックも身につけなくてはなりません。
どれか一つでも大変なのに、その全てを指導しなければ…と考えると、導入の指導には気が遠くなってしまう方もいらっしゃるかも知れません…。

そこで、導入の教本に併用して、この『ゆびのたいそう』を使用していくと、これらの問題が、かなり楽に、しかも、各々の生徒さんの能力に応じてクリアできるのです。
一つ一つの問題について、具体的に、書いていってみます。

《音符を読む・鍵盤の位置》
導入期に音符を読むというのには、二つの側面があるように思います。
一つは、どの音符が何の音を表しているのか…というのを覚えるという事。
もう一つは、音符を次々に読むことが苦痛でなくできるまで定着している事。
そして、この定着が大変なために、導入期の上達に苦労する…というケースは、多いような気がします。
その点、この『ゆびのたいそう』1・2では、短い課題が数多くありますので、それらを順番にクリアしていくうちに、音符を読むことが当たり前になってきます。
同じような課題が沢山あるので、一つの事をクリアするのに、時間がかかるお子さんでも大丈夫です。

1巻では、左手が中央ド、右手が高いドを最低音とした5音によるポジション。
2巻では、左手が低いド(ヘ音記号)、右手が中央ドを最低音とした5音によるポジションからはじまり、後半の数曲では、ハノンのような平行移動の課題も出てきます。
すべて片手の練習ですので、生徒さんへの心理的負担は、ほとんどありません。
階名唱しながら弾くと、譜を見ながらピアノを弾く時の頭の働きが、自然にできるようになります。

《指番号》
指番号については、予備練習が必要です。
指番号を言ってその指を動かす練習、同じ事を眼をつぶって行なう練習…などで、指番号に慣れておきます。
その上で、楽譜にかかれた指番号を見ることが当たり前になるのに十分なだけの課題数が、このテキストにはあります。
特に、平行移動する際、同じ指を使う…という事が当たり前にできるようになるだけの課題が、3巻に用意されていて、この課題をこなしてからハノンに入るのと、そうでないので、指の動きのスムーズさには、大きな違いを感じます。

《指の独立》
指の独立が必要なのは、主に3〜5指である訳ですが、それらの課題が、ごく自然に繰り返し出てくるので、生徒はおそらく、あまり難しさを感じないうちに、それらの指を動かしていることになると思います。
最初の頃からそうして、自然に指の独立を促すことで、教則本の難しさを、緩和できる面もあります。

《手の形・姿勢》
指先を丸く、掌も丸くして、手首の高さも適切にして、良い姿勢で力が入らないように…というのは、ピアノに触れて間もない子供にとっては、とても大変なことです。
でも、先々の事を考えて指導していく我々としては、なるべくはやく身につけてもらった方が、表現に様々な可能性が出てくる…という点でもあります。
しかし、レッスンの際に余りしつこくそればかり言うと、ピアノそのものが嫌いになってしまうかも…と、注意するのを躊躇されている先生もいらっしゃるかも知れません。
でも、このテキストでしたら、片手の短い曲ですから、小さいお子さんでも、自分で気をつけて取り組む事ができます。

《ブラインドタッチ》
手元を見ないで弾く…というのは、指の独立が不完全な時には、非常に不安で、分かっていてもなかなかできないようです。
でも、片手でポジション移動がなく、短い、このテキストの課題でなら、不安を解消して、ゲーム感覚で、ブラインドタッチを身につける事ができることでしょう。
具体的には、片手で2〜3回弾いてもらった後で、手元を別の楽譜などで隠して、手を見られない状態にして弾いてみます。
姿勢や手の形に慣れて、弾く時に、手が左右にぶれなくなった頃が、ブラインドタッチの練習をするのに適したころでしょうか…。

《課題の与え方》
1,2巻では、課題が多いので、生徒さんに負担がない場合は、1ページに2曲づつ出ている課題のどちらかを、生徒本人に選ばせています。
3巻では、リズム変奏も出てくるので、ハノンでのリズム練習にもスムーズに入ることができます。
リズムは、難しいものもでてきますが、言葉を当てはめる…などすると、小さいお子さんでも、難しく見えるリズムで自宅の練習ができるようになります。
要求の度合いとしては、音の読み方ができるようになるまでは、姿勢などはあまり厳しく言わず(「足を台につけてね」位)、音符を無理なく読めるようになったら、徐々に、細かい指摘をしていくのが、良い様に思います。


2002年06月09日(日) 外国人の生徒さん…

大分前から、私の中で答えが出ていない問題に、外国人のお子さんの指導の問題があります。
私を悩ませている外国人のお子さん…というのは、主に、南米からの日系人(主にブラジル人・ペルー人)なのですが…。

今まで、指導したり、入門したい…と言ってきた生徒さんは、5〜6人なのですが、そのうち、最低限のコミュニケーションがしっかりとれたのは、一人だけ。
他は、親御さんが日本語ができない、元々、勤勉に何かを行うことが苦手…という国民性の違いもあって、上達する…という所までは、どうしても引っ張りきれません。
レッスン見学やプレレッスンの約束をしても、ケロッとすっぽかすこともしばしば。
その上、押しが強くて、理不尽な断り方をしたら、きっと人種差別だと思ってしまうのだろうなぁ…などと思うと、頼まれるたびに、気が重くなります。

実は、先日も、入門したい…という電話があったところなのですが、ホンモノのピアノと、おもちゃのピアノの違いも分からない様子です。
殆どの生徒さんを断りたい…とは思わないのですが、日本語が通じない、英語も通じないこの方たちだけは、引き受けても、どうしてあげたらいいのか分かりません。


2002年06月05日(水) 『リトルコスモス』

少しづつ、私が普段、よく使用しているテキストについても書こうと思っています。
最初に紹介するのは、全音から出版されている、『リトルコスモス』です。

導入の頃から、導入教材が終る頃まで使えて、バロックから現代曲まで、日本人作品も含めて、様々なスタイルの曲からなる曲集で、多様な曲を勉強するのにうってつけです。
初級学習における課題の偏りをカバーし、様々なスタイルの楽曲の学習に繋げていく事は、長い目で見てピアノ学習の可能性を狭めないためにも、とても大切だと思います。

その上、モノクロではありますが、とてもセンスのいい、可愛らしい挿絵がついていますし、音符も大きめですので、お子さんが自分で譜読みをしながら、楽しく取り組んでいくのにピッタリです。

どの曲も個性があって魅力的ですから、簡単な曲ながらも、音楽の、ピアノの奥深さを感じることができることでしょう。

テキストのタイプとしては、4期学習を目的にしたものですが、その理念をしっかり持ちながらも、子供が受け入れやすく楽しめるタイプのテキストです。


2002年05月23日(木) 初めてのグループレッスン

土曜日に、新しいグループでのグループレッスンを行ないました。
このグループレッスンは、私にとっても、行なってみるまで、とても心配で、緊張するものでした。
…というのも、このグループの全ての生徒がグループレッスンは初めて。
しかも、全員、違う小学校に通っていて面識はなく、小学1年生の男の子、小学3年生、4年生、5年生の女の子…というメンバーで、そのうち2人が姉妹…というものだったからです。

あれこれ考えているうちに、グループレッスン当日がやってきました。
最初は、来た順に、ハノンやゆびのたいそうなどのメカニックな課題をやり、待っている生徒には、ドリルをやっていてもらいます。
姉妹の二人を除いては、全員が初対面…という状況なので、全員が緊張しています。
1年生のSくんは、最初、お母さんの横でドリルをやる…なんて言い出すし、いつもは疑問に思ったことをどんどん質問するMちゃんも、ドリルが進んでいるのに、私に知らせてくれません。
私が話しかけると、どの生徒も何となくホッとしたような気配もあります。
でも、ドリルをやっているのが自分だけではない…というのが分かって、ドリルに対する意識は変わり、ドリルをやるのは当然…という認識ができたようでした。

30分ほど、ドリルとメカニックの練習をして、初めてのミニコンサートで弾く曲を用紙に書いてもらった後、次の課題に移ります。

通常のグループレッスンでは、ここでミニコンサート…となる訳ですが、緊張した雰囲気で、お互いを良く知らないままミニコンサートに入っても、いい結果は生まれません。
…という訳で、初めてのレッスンで、仲良しになるための、簡単なゲームをすることにしました。
こんなゲームです。
 輪になって全員で4拍子を叩きながら、私が生徒の名前を呼びます。
 それに続いて、呼ばれた本人以外の全員が、同じ名前を呼びます。
 全員に呼ばれたら、呼ばれた生徒は「ハーイ」と返事をします。
 返事をするタイミングを間違ったり、全員で呼ばなくてはならない時に、ハッキリ呼ばなかったり…という場合は、持っているおはじきを返さなくてはいけません。
 誰かの持っているおはじきがなくなったら、ゲームはおしまいです。
 一番沢山、おはじきを持っている人が勝ち。全員で、勝った人に拍手します。
たったこれだけのゲームですが、お互いの名前を繰り返し呼んでいるうちに、どんどん打ち解けた表情になってくるのが分かります。
始めはゆっくり、2回目ははやく、2回ほどやっただけで、ドリルをやっていた時にあった固い雰囲気がなくなってきました。
これなら、ミニコンサートをはじめても大丈夫そうです。

「ミニコンサートの順番を決めるから、じゃんけんをしてね〜」
と言って、順番を決め、プログラムを作ります。
PCをプリンタにつなぎ、打ち込んでレイアウトを決めている間、全員が後ろに貼りついて、興味津々…という感じで見ています。
私にとっては慣れた時間ですが、子供たちにとっては、とても珍しかったようです。
5分ほどでプリントアウトすると、カーテンを閉め、電気をスポットライトに変えて、ミニコンサートの始まりです。
はじめてにも関わらず、皆、自己紹介も演奏もよくできています。
最後に、私が、平均律から簡単なプレリュードを1曲弾くと、それも、とても興味を持って聴いている様子が伝わってきました。

さて、カーテンを開け、部屋の空気をチョット入れ替えて、次は、歌です。
歌の前に、簡単な脱力の為の体操と、ロングトーンなどによる発声練習をするのですが、これは、全員全く初めてだし、「ピアノを習っているのに歌??」と思っているようでした。
でも、かまわず指示を出して、続けます。
ロングトーン(別名:誰が一番声が長く続くかコンテスト)では、息の使い方が全くできていないし、立ち方、口の開け方(共鳴のさせ方)もまだまだなので、声がすぐに終ってしまいます。
1年くらい続けると、だんだん、できるようになってくるのですが。
発声練習の準備を終えて、グループレッスンが初めての生徒がいる時には必ず歌う、トラヤ帽子店の『パレード』を歌います。
ポピュラー調のこの曲は、子供が声が出やすい音域で、途中、特にテンポを落として美しく歌わなくてはならない所があり、最後はリフレインをテンポを速めながら繰り返して終る…と、1曲のなかに、音楽の様々な要素が、ごく自然に織り込まれている名曲だと、私は思っています。
又、歌に慣れたら、打楽器を持って、リズムを裏打ちしながら歌う…など、楽しみつつ、クラシックでは学びにくい要素を学ぶこともできます。
何よりも、数回繰り返して歌うと、子供たちは、この曲がとても好きになっているのです。
…という訳で、私が先ず、弾き語りで聴かせて、次に一緒に歌い、最後に打楽器を合わせます。
この打楽器を、私は、まとめて籠に入れてあり、生徒に、好きなものを選ばせます。
カスタネットやトライアングル、鈴にタンバリンなどの定番のものもありますが、ウッドブロック、クラベス、マラカス、ギロ、カバサなどもあり、子供たちは思い思いにイロイロな楽器の音を試して、好きな楽器を選んでいます。
この時の顔が輝いていて、その様子を見ているのも、私は、結構好きなのです。
それぞれが選んだ楽器に応じて、その場で、アンサンブルの方法を示して、チョット練習し、すぐに合わせます。
音楽に最初からしっかり合わせられる子もそうでない子もいますが、そういう様子を観察して、今後の指導の方針に活かすのも、グループレッスンの効用…という気がしています。

残った時間で、ゲームをやります。
普段は、譜読みを強化するゲームや、楽典的な理解を補助するゲームを行なうのですが、まだ、そういった個々の能力を私が十分に理解していないので、言葉リレーや鍵盤上を指で歩くゲームなどを行ないました。
この頃には、最初の頃の固い雰囲気は、すっかりなくなって、もう随分前から同じメンバーでグループレッスンをやってきたかのような雰囲気になりました。
最後に、
「これから、行事がない時には、毎月1回グループレッスンをやるのよ」
と言うと、一番小さいSくんが、教室の壁に貼ってあるレッスンの予定表を見に行って、
「この次は、6月15日だよ!!」
と、楽しみにしている様子で、皆に次の予定を知らせてくれました。

こうして初めてのグループレッスンを終えて、私も、個人レッスンだけでは分からない、一人一人の性格を把握することもでき、ホッとひと安心できました。
これから、このグループでの時間を有意義に過ごしつつ、いろいろなことを指導できたらいいな…と、私も、グループレッスンを楽しみにしています。


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