星降る鍵を探して
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2003年09月16日(火) |
星降る鍵を探して4-3-8 |
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いくら『底なしみたいな体力の持ち主だ』という評価を受け続けてきたからと言って、卓だって人間だ。そして人間なら、否生き物なら、動き回っていればいつかは限界がやってくる。 卓の限界は唐突に来た。しかも階段を駆け下りている最中だった。かくん、と膝が抜けたかと思うと、ぐるりと気色が回って―― 「!」 目を見開いたマイキの顔が斜めに見える。 卓は無意識のうちにどこかに掴まろう、と大きく手を動かしたが、マイキがその小さな両手を差し出したのを見てとっさに手を引っ込めた。マイキに比べれば卓の方が遙かに重い。マイキに掴まってしまったら、マイキの力じゃ支えきれない。 「落ちたぞ!」 という追っ手の勝ち誇った叫び声を頭のどこかで聞いてから、痛みと衝撃が襲ってきた。自分が階段を転げ落ちたときに立てたはずの重い音は全く聞こえなかった。感じたのは体のあちこちにぶつかってくるごつごつした階段の感触と、重くて鈍い痛みだけ。 そして気がつくと卓は階段の踊り場に座り込んでいた。無意識のうちに受け身は取ったらしかったが、折れた肋骨には充分すぎるほどにひどいダメージを与えたようで、酷使し続けた肺と足はもはや立ち上がることを許してくれそうもなかった。階段の上に姿を見せた二人の追っ手を睨み上げるしか為す術のない自分が悔しくて、それ以上に、転がるようにマイキが駆け下りてきて、卓を追っ手から守るような姿勢を見せてくれたのが、無性に情けなかった。 「油断するなよ。高津をあんなにしたのはあいつだ」 ゆっくりとこちらに降りてきている男に、遅れている方が声をかけた。先を行く方は「……へえー!」と素っ頓狂な声を上げ、階段の中程で足を止めて、卓をまじまじと見つめ、そして後ろの男を振り返った。 「……ひとりでえ?」 「ひとりでだ」 「へえー!」 再びこちらを振り返り、なるほどねえ、と頷く。 「なるほどねえ、見るからに凶悪そうな顔してるもんな」 ――誤解だ。 卓は何とか呼吸を整えようとしながら、声に出さずにうめいた。 ――凶悪なのは顔だけなのに。 いや、今日一日でしてきた所行を思い返せば、もう誰も信じてくれないような気がするけれど。
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すみません…… すみません………… 魔女書いてました。(懺悔) や、やればできるものだのう。(バカだ!)
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