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週末、買い物に出かけようとすると、角っこの家で熱心に愛車を洗うそこの家の長男さんが必ず作業の手を止め、パッと頭を上げて笑顔になり、「行ってらっしゃい!」と大きな声で話しかけてくれました。 就職と同時にこの街を出てゆかれたはずなのに、親御さんの体調が思わしくないことが心配なのか、毎週必ず土日をご実家で過ごされていたようです。 歳が離れていたこともあって子供の頃に彼と遊んだ記憶は皆無なのですが、いつお見かけしても本当にお手本みたいな爽やかな笑顔を見せてくれる長男さんのことを、好ましく思わない人はたぶんこの近所にはひとりもいないはず。 ところが先日ご不幸があって、彼の姿を二度と目にすることができなくなってしまいました。 ご実家の前で彼が洗車をするのは毎週末必ず……だったので、次の週に初めて彼も車も無いご実家の前を通りがかった瞬間、ぐっと胸に込み上げるものがありました。 だからと言って、特別親しかったわけでもない私にはどうしようもなく、なんとも宙ぶらりんな寂しさを抱えたまま日々が過ぎてゆくばかり。 今はご実家の前を通るたび、爽やかな初夏の風に乗ってお線香のかおりが切なく漂ってきます。 |
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