カエルと、ナマコと、水銀と
n.446



 瞬黒

=瞬黒=

常備薬を懐に忍ばせて、街灯の瞬きにあわせて姿を消します。月光の下では、私、猫に変身し、流動的な筋肉をしならせる。跳躍した先に、転がるのは、街の光。肖像を失いつつあり、行き先は誰ともなしに告げて行けば、そのうち。情哭したなら、風を喰らいましょう。焦燥的疾走感がうやむやに消えそうなのは、ただ肉体にかまけた自分がいるから。
夜は深まるばかりで、候。


=芳香=

場所によるけど、君の座ったところはまだぬかるんでいるらしいよ。誰かがそこの水溜りに足をとられて、奈落のそこへ落ち込まないか、って、遠くから見てる。君はまだ尊法を知らない。知っても意味ない。だから、昨日見た夢のことを語ってみたんだ。君は聞くふりをして、何も聞かない。なぜかといえば、向こう側のベンチに座る僕が気になって仕方ないから。そんな、理を沙羅双樹の木の下で、もとい、桜の木下で悟ったってわけだ。


=黒猫の彼女=

ロゼッタストーン噛み砕いたのは私。どうもこの頃寝つきが悪くて、相談しにきましたら、彼女は留守さ。インターフェロン。は、フェロモンの一種でしょ。十二分につづられたレポート用紙から、艶かしい脚がはみ出してます。太ももには筋肉のみぞ。神のみぞ知ると、彼女に問えば、するり、さはり、とこり、と逃げられてしまったのだよ。

2007年04月26日(木)
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