耳障りな笑い声が唐突にきえてわたしがわたしにほうりだされる いつもいきなりだから、まだ慣れないであたし 水揚げされていくさかなみたいにばたばた、するんだ 頭に爪を立ててかさぶたを削り取り 髪の毛をちぎる
いきていく、というあの綱はどこにつないであるんだろう。
ひとりになるのを全身がいやがるのを 押さえつけてだいじょうぶといいきかせる火曜日水曜日、 この生活になってもう三年もたつのにまだ慣れないよおかしいね、と 口に出して、わらいました。 きみに言って、わらいました。
さっき編んだ髪の毛をざくりと切り落としていったらなにかが変わる?
変わる。 変わります。 すくなくともここに横たわる 生半可に苦しいいきものは消せるだろう、 しゅうっと 炭酸の泡みたいにらくらくと
そうぐるぐると思いながら、きっとひとときふかい息をできるとわかりながら だけど腕を神経の糸切れにてしばりつける 乱暴な気持ちでじゃきじゃきと動かすはさみは今このあたしを楽にするだろうけれど あしたのことは、なんにもわからない
できるだけ静かな身体をたもって 荒れる腕でもあばれる足でも心臓でも ひとつ、ふたつ、みっつ、、、ハナ、トゥル、セー、ネ、 緩やかな踊りのあしぶみを、記憶から掘り出してくりかえす やさしい掛け声、うしなったものを タソ、ヨソ、イルゴー、ヨドル。
あたらしいおひさまを、むかえて また、わらうんだよ つめたい空気に顔をさらして痛みと思いがけないここちよさを 味わうんだよ
呪文は、たくさん たくさん増えたけど まだ、きえない かんじんのこころが
……わかってもらえるような気がしてずるいあたしあなたに、 逢いたかった。
2011・睦月・25、夜との境目
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