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人物紹介


自己嫌悪
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帰りは、なんだか、微妙な空気が流れていたように思います。
映画の感想を気安く話せるような、そんな内容では無かったからなのかもしれません。
多分、二人とも意識して避けていました。
私は逆に、別の意味で先輩を意識してしまって、余計に喋れなくなっていたのかもしれません。
記憶がかなり曖昧ですが、多分、駅の側の店で早い夕飯を食べました。
私が頼んだのはグラタン。それも、1/3は残した記憶があります。
帰りの電車では、座る事が出来ました。
先輩はまもなく居眠りをしだし、私は外の景色を見ているフリをしながら、窓に写る先輩を見ていました。
このまま地元の駅についても、門限まではまだ時間ありました。
駅に着いてしまったらどうするんだろう?
それで、バイバイになっちゃうのかな?
もっと先輩と一緒に居たいと思っていました。

地元の駅まで後2駅の電車の乗り換えの駅に着くと、

「おー、俺、寝ちまったよ」

と先輩は言いながら軽く延びをしました。そしてホームに降りると急に、

「お前、こっから一人で帰れるか?」

と聞きました。
まだ一緒に居られると思っていた私が戸惑っていると、

「まだ早いからさ、俺、これからちょっと○○(地名)に行くわ」

と言いました。思わず、私は

「え?これからですか?」

と聞き返してしまいました。
先輩は少し笑ったような表情をして

「(乗り換えの)ホームまで送るか」

と独り言のように言いながら歩き出してしまいました。
ホームに上がる階段の下に着くと先輩は足を止めました。
私もその場で立ち止りかけた時、先輩に腕を掴まれ引っ張られました。
多分、他の通行人の邪魔だったのでしょう。
私はまた失敗したという恥ずかしさと、先輩との距離の近さにドキドキしました。
「すみません」
と言い俯いたままの私に対し、先輩は何も答えませんでした。
腕を掴まれたまま、じっと見下ろされているような気配を感じました。
ほんの2-3秒の事だったのかもしれませんが、私はその状況に耐え切れず、階段の上を見るフリをして顔を上げました。
視界の端に先輩の顔がありました。

私が顔を上げると、先輩の手が離れました。
私は、先輩の方に顔を向け、

「あの、今日は本当に有難う御座いました。」

と言いました。
先輩は心なしか我に返ったような表情をしたように思います。

「あ・・あぁ、ごめんな。」

先輩に謝られ、それが何の事なのか分からず、「え?」と聞き返すと

「いや、まぁ・・な。一緒に帰ってやれないしさ」

と先輩は答えました。
先輩は、もしかして映画の事も言ってるんだろうか?
そんな事を感じながらも私は

「大丈夫ですよ。電車ぐらい。先輩も気をつけて行ってきて下さいね」

と、これから遊びに行くだろう先輩に、変な日本語でいってらっしゃいを言ったつもりでした。
先輩は「それ、逆だろ。」と言って笑いながら

「じゃぁな。お前こそ気をつけて帰れよ。また、連絡して。」

と私の背中を押すようにしました。
私は、階段を上がる自分を先輩に見送られるのが嫌で、

「先輩、先に行って下さい。私は階段上がるだけだし・・」

と言いました。
先輩は独り言のように「見送るのは男の役目なんだけどなぁ」と言った後、

「じゃ、行くわ。またな」

と言って、元来た道を一度も振り向かずに引き返して行きました。
私は先輩が見えなくなるまで見送り、ホームに上がりました。

先輩がこらから出かける予定というのは、最初から決まってたんだろうか?

帰りの電車に揺られながら、そんな疑問を感じました。

最初から決まってたなら、会った時に言ってくれてもいいはずだし。
もしかしたら、私と居てつまらなかったから早めに切り上げて出かける事にしたのかもしれない。
駅について、急に思いついて言い出したのかもしれない。
でも、「一緒に帰ってやれないから」って申し訳無さそうに先輩は言ったし。
だとしたら、予定は決まって居て、私に言い出せなかったってこと?
だから、映画館の側で別れた方が先輩にとっては行き易かった場所なのに、ここまで一緒に来てくれたっていうこと?
わざわざ、私を送る為だけに?

私には、先輩が何を考えていたのか答えが出せませんでした。
自分が詰まらない女と思われていたのかもしれないと思うと、心が落ち着かなくなりました。


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自己嫌悪に陥りました。
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「恋愛履歴」 亞乃 [MAIL]

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