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人物紹介


白い車 2
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前の週の木曜日から居残りが始まり、5回目の反省文を提出した日。
バイトの帰りに声が聞きたくて電話をしたK先輩は、居ませんでした。

居残りが始まってからというもの、バイトに行けば、私が遅くなる事で社員の人が大変になるらしく、Tさんに毎日嫌味を言われました。
もしかしたらTさんは、そんなつもりは無いのかもしれませんが、彼女の口調はそう
感じさせる所がありました。
家に帰れば、母親との下らない喧嘩が続いていて。
反省文は書いても書いても教師の機嫌は直らず。
私は徐々に、イライラし初めていました。
学校もバイトも家も、全部放り出したいような焦燥感がありました。

だから、せめてK先輩の声が聞きたいと思ったのに。
期待はしないと思ってかけたものの、やっぱりかなり落ち込み悲しくなりました。
何もかもが詰まらない。
私が助けが必要な時に結局、先輩は捕まらない。
物凄い失望感に教われ、K先輩に対しての気持ちまでも揺らいでしまいそうでした。
その気持ちを埋めるように、その夜も、翌日の授業の休み時間も、居残りの時間も。
私はセーターを編み続けていました。

居残りを始めてちょうど一週間が経ちました。
取り合えず一週間とは言ったものの、前日まで、教師の反応は悪いままでした。
でも、もう続けても仕方無いから今日で最後にしようよと私達は決めていました。
居残りの毎日は、何故か良い天気の日ばかりで。
余計に私達は苦痛でなりませんでした。
早く帰って遊びに行きたい。みんな、そう思っていました。
K先輩へのセーターは、後は袖を残すだけのところまで出来上がっていました。

さっさと反省文を書いてしまおうと思った時、教室に担任が入ってきました。

「お前たち、もういいから帰りなさい」

担任のその言葉が、生活指導教師が私たちを許したと言う事になるのかどうかは分かりませんでした。
もしかしたら、教師の都合で早く下校させたかっただけかもしれません。
でも、私達は取り合えずこれで解放されるんだという嬉しさで一杯でした。

その日は、やはり天気が良い日で。
今日は夕日が綺麗そうだな・・・
そんな事をふと思いながら、皆と学校を出ました。
丁度、掃除当番を終えた他の生徒が下校する時間で、

「久しぶりにまともな時間に帰れるよ。」

などと話していました。
その頃、K子もバイトをしていたので、彼女は早くバイトに入って稼げると喜んでいました。
私は、バイト先が定休日で早く帰宅しても何も無い日でした。
余り早く帰って母親と顔を合わせるのも嫌だなぁ・・と少し思いながらも、やっぱり早く帰れるのは嬉しいものでした。
もう少しで先輩のセーターも出来上がるし。一気に仕上げてしまおうか?
そんな事を考えたりしながら歩いていると。
また、白い車が先週と同じ場所に止まっていました。

遠目で見た瞬間、一週間前と同じ白い車だなと一瞬だけ思いました。
でも、同じ車だかどうかすら、考えませんでした。
車の色以外を覚えていなかったのです。
その日、私たちが学校を出たのは、一週間前のあの日より遅い時間でした。
居残りが無くなっても、一時間近く遅かったのです。
だから余計に、それが同じ車でMさんがまた来ているとか、まして、自分を待ってるなどとは全く想像もしませんでした。
そこに車が止まって居る事は、よくある事だったからです。

徐々に車の方に近づいた時には、私はその車に何の関心もなくなっていて、視線を逸らして歩いていました。
その時、前を歩いていたK子が

「あれ、また5組の○○待ってるんじゃない?」

と言い出しました。
そう言えば、一週間前の時も。
私は今、K子が言った子と同じ子の彼氏だと思ったなと思いました。

「そう言えば、下駄箱にあの子いたよね」

とK子と並んで歩くY美が答えました。
そうなんだ・・と思い、私は彼女達の後ろから少し身体を出すようにして、改めてちょっとだけ車を見ました。
スモークフィルムが貼られているその車は、逆光で中に人が乗ってるかどうかは分からず、すぐに目を逸らしました。
その5組の子は、どうやらY美もK子はよく知っている子らしく。
中学から評判が悪かったような事を言い、関わりあいたくないような雰囲気でした。
当然、その子の彼氏の車だとしたらガラの悪いヤツが乗っているのだから、目をあわさない方が良いと、彼女達は車を避けるように車の手前でオーバーに避けるように少し早足で歩き出しました。
私はRと並んで車側を歩いていましたが、そこまで避けなくても・・・と思い、そのまま歩調を変えずに歩き過ぎようとしていました。

車が目の前に来た時、急に運転席の窓が開きました。
そのまま通り過ぎようとした私は、その窓から手を上げるようにして顔を出した人物を見て、足を止めました。

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「恋愛履歴」 亞乃 [MAIL]

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