睦月の戯言御伽草子〜雪の一片〜 Copyright (C) 2002-2015 Milk Mutuki. All rights reserved
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昨日までは露天風呂ばかり入っていたので内風呂は狭く感じた。 それでもここは林を渡る風の音や木々の香りが感じられた。
外では笙が風呂の火の番をしている。 「ぬるくないですかぁ?」 「うん、でも、お地蔵様にこんなことさせてていいのかなぁ」 「ここでは特に誰が何をしてはいけないって事はないですから、それに兄様達がゆきさんのためなら何でもして差し上げなさいといってたので気にしないでください。私も楽しいですから。」 「そういわれると余計恐縮しちゃうよな。・・・そういえば僕って寝てるとき何か言ってた?」 「いえ、特に何も。ただ苦しそうでした。」 「そっか。」
風の音と薪のはじける音が心地よく苦しかった思い出せない夢のことを忘れさせてくれるようだった。狐は禊って言ってたなぁ・・風呂に入るだけじゃだめなのだろうか?などとうだうだと考えいつものように結局は長風呂になって、狐が用意した軽い朝食はすっかりさめてしまっていた。
「温め直しますね。禊前なので夕べと同じで生臭は出せませんので許してくださいね。」 「気にしなくていいよ。何でも食べれるから。」 「わかりました」 狐は一度お膳を持って奥へ下がっていった。
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