い つ の 日 も 君 に 光 の 恩 寵 が あ る よ う に 。 毎年毎年、こなければいいとすら思っている。 呪っていた程ではないが、少なくとも自分にとっては誕生日などという日は歓迎できる日ではない。 祝いという名目のパーティーで、彼らは一体何を祝っているのだろうかと思いながら過ごす数時間を今年もまた無駄に繰り返すのだろうかと思うと、うんざりした気分になった。 学校があっても、それは別段変わらない。学校に行けば誰かしらには確実に祝いの言葉か何かを与えられ、代わりに感謝の言葉を述べる。 相手には失礼だとは思ったが、その繰り返しには飽き飽きしていた。 感情が欠落したやりとり。そんなものを繰り返すのは嫌だった。そしてまた、それを隠すようにわざとらしい程完璧に笑顔を浮かべる事も嫌だったし、それができる自分への嫌悪感も拭いきれない。 跡部は溜め息を吐き出すと同時に後ろの机に肘をついて天井を仰ぐ。そして目を閉じ、自分の机に足をのせる。 なんだかんだで結局今年もその繰り返しをしている。 放課後だがこういう日にかぎって部活動はなくなり、パーティーに遅れる口実を作る事もできなくなる。 事実を確認すると余計にうんざりとした気分となり、思わず舌打ちをすると聞き覚えのある声がした。 「みけんにしわ、よってる」 「……………慈郎」 せめて足音ぐらいはたてて欲しいと内心思いながら、できるだけ平然とした態度で跡部は目を開き、足を机から降ろした。 「おはよ」 「もう午後だ」 「うん、だから一緒に帰ろー?」 にこにこと笑っている慈郎と自分の温度差に思わず目線をそらしたが、出そうになった溜め息は飲み込んだ。おかげで妙な間を開けながらも跡部は視線を慈郎に戻した。 「……ぁあ」 「…………帰りたくないの?」 正直に答える事に対する罪悪感。何故だかそうとしか表現出来ない息苦しさを感じて、跡部は言葉を濁した。 答を、濁してしまうのは一体なんの罪悪感からなんだろうか。 嘘をついても見破られるとわかっているからなのか、それとも嘘をつこうとする事自体へのものだろうか。 「それも、嘘じゃない」 「……そっか……あ、そうだ飴あげる」 「飴?」 「だって今日誕生日でしょ? 前祝い」 「前祝い?」 「前祝い。あとでちゃんとしたのもあげる」 とりあえずおめでと、と慈郎は言い終わらぬうちに、跡部の口になかに無理矢理飴玉を押し込んだ。 「……甘い」 当たり前の感想に慈郎は笑い、顔を顰めた跡部の腕を引いた。 「俺ンち寄ってから帰んない?」 「フン、ちゃんとしたプレゼントでも?」 「もちろん」 「……ま、今日だけな」 跡部はそう答えて眉間の皺を消して微笑んだ。 言葉か何かを与えられる代わりに、社交辞令の感謝の言葉を述べる、感情が欠落したやりとり。そんなものを繰り返すのは嫌だ。 だからと言って急にそうでないことをするのも気がひける。 きっとそれが罪悪感に捕われる理由。 けれど、だからこそ自分は彼に甘いのだろう。 (いつだって、彼から与えられるのは甘い暖かさばかり。) 「もらうまで期待しといてやるよ、慈郎」 うわべだけでない、暖かな感情さえあれば誕生日だって喜ばしい日に変わるのだ。 -- 結局うまくオチてないけどおめでとう、おめでとう、大好きだぜ! (誤魔化さないでください…)
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