「万丈目、」 呼びかけた自分の声を遮りそうなぐらいに冷ややかな視線に見据えられ、遊城は目を思わず丸くした。それから――彼にしては聡い事に――即座にその意味を理解し、繕うように「サンダー」と付け加えてにこりと笑った。 その笑顔に万丈目はそれこそ苦虫を噛んだように顔を歪めて、フンと鼻を鳴らした。 「――……何か用か」 それから遊城から顔を背けるように俯いた。 手の内の本へと視線を戻し、組んでいた脚を組み替えた。同時に溜息が小さく漏れた。 遊城は万丈目の態度にいつものような軽い笑い声を上げ、その隣に腰を下ろした。 「なんだよ。用がねぇと話しかけるのもダメって?」 言いながら、万丈目の視線を追うようにその文庫本を覗き込む。 だが、遊城がその本文を読み取るよりも早く、万丈目の手は栞すら挟むことなく静かに文庫本を閉じてしまった。 「ああ」 鬱陶しい、と全身で語るように万丈目は答えた。 けれどもそれを無視して遊城は尋ね返した。 「なんで?」 「……迷惑なんだよ」 小さく舌打ちをすると、当然のように万丈目はその言葉を切り捨て返した。 その声が先程から徐々に声が冷ややかになり、荒げられ始めているのには当人も気づいていないらしい。 「迷惑? なんで?」 それでも食い下がらずに遊城が片手を軸に身を乗り出すと、万丈目はとうとう鋭い視線を遊城に向けた。同時に、叫ぶような怒声が響く。 「なんでも、だ!」 だが、遊城は少しも動じずにからからと笑うだけだった。 「そんな怒るなよ。お前ってほんと、短気だな」 「煩い! 貴様、俺を馬鹿にしているのか!」 けれども万丈目はすでに限界点を越えたらしかった。笑顔に宥められることもなく――そもそもそんな事のほうが希ではあるが――手にしていた文庫本を床に叩き付けるようにして立ち上がり、腰を下ろしたままの遊城を見下ろして怒鳴り散らした。 その捲し立てるような剣幕に、さすがに遊城も苦笑いを浮かべた。 「そういうわけじゃぁ…」 けれども結局はその言葉尻を濁した苦笑いすらも火に油を注ぐことにしかならないらしかった。万丈目は先程よりも苛立たしげに怒鳴る。歯軋りまでくわわり、その顔が怒りで歪むのに遊城はどう対抗すればいいのかとアレコレ思考を巡らせた。 「じゃあなんだと言うんだ貴様ァ!!」 「え、えーと、それはー…」 「遊城十代!」 言葉を濁せば、万丈目御得意のフルネーム呼びがぴしゃりと飛んだ。遊城はその呼び声に「あ」と声を上げた。 「そういえばさ、お前なんで俺のことわざわざフルネームなんかで呼ぶんだ? 面倒じゃねぇ?」 「はぁ?!」 それから、万丈目の様子を伺うこともなく続ける。 「俺は別に『遊城』でも『十代』でも構わねーよ? 俺だってお前のこと『万丈目』ってよ、」 「だから『万丈目さん』だ!何度言わせる気だ遊城十代!」 「だからわざわざフルネームで呼ばなくたって…」 「煩い!」 -- 中途で投げる。(……) この人たちもどっかの屋上とか、なんかサボリスポットが酷似していそうなイメージ…。 うーんわりと書けそう、かも。 でも十代の事を遊城と表記するか十代と表記するかでちょっと悩みどころです…。 とりあえず準を万丈目と表記するなら遊城とすることにしたのだけれど……。 そのうちちゃんと書き終えてサイト移動できたらいいな。
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