愛玩人形の抱き方+
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足元にまとわりつく男なんて要らない。
世の中には、「押しに弱い人」という人種がいる、らしい。肌の色なんかよりずっとカテゴリの差異を明確に感じる。市野の意見ではなく、市野が友人から聞いた話だけれど、つまり、理想のひとを追い求めるよりも、自分を恋い慕ってくれるそこそこの相手で良い、と思えてしまう人種(らしい)。
それが良いとか悪いとか、そんな話ではない。単に市野は、その人種ではない、ということ。
市野は、駆け引きの好きな(そして上手な)ひとがいい。仕掛けて仕掛けられて、ここぞと言うときに気持ちよく罠に掛けてくれるようなひと。コドモでは到底真似の出来ない大人の。自分と同じ場所にいてはだめ。ずっとずっと手の届かない先のほうにいて、振り返って手を繋いでくれるひと。それなら市野は努力する。振り返ってもらえるように。見つめられるように。
なんだか「白馬の王子様」を夢見る少女と変わらないような気がしてきたけど、残念なことに市野は御伽噺の主人公じゃないから。スポットライトは自分で当てるの。
そうして市野は、恋におちた。
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