2007年01月12日(金) |
次世代DVDは、日本の家電業界の転換点になるか |
今週の月曜日、一つのニュースが目に飛び込んできた。 アメリカの家電見本市で、韓国の家電メーカー、LG電子が次世代DVDで ある、ブルーレイとHD DVDの両規格の再生ができるプレイヤーを発表 したらしい。
次世代DVDに関しては、ソニー・松下連合の「ブルーレイディスク」と、 東芝陣営の「HD DVD」が、デファクトスタンダードを取るべく、しのぎ を削っている最中らしいのだが、この韓国メーカーによる両規格再生 機能を持つプレイヤーの登場によって、そのデファクトスタンダード 争いは意味がなくなるんじゃないだろうか。
だって、一消費者にしてみれば、両規格が再生できるプレイヤーが あったら、それが一番面倒くさくなく、シェアを取りそうな気が するからである。
パソコンについているDVDメディアにしたって、DVD-Rだろうが±RWだろ うが、-RAMだろうが規格を選ばないスーパーマルチドライブが一番 使いやすい訳だし。
元々、両規格を読み込むことのできる読取装置は、日本のNECがすでに 完成させていたらしいけど、それが初めて製品化されたのが、この韓国 メーカーによるものみたいで。
という事はつまり、そのOEM技術を使えば、韓国メーカーに限らず、 中国だって台湾だって、同じような両規格を再生できるプレイヤーは 生産できる訳だよね。
それに対して、日本の各メーカーの反応が、1月10日付東京新聞の 特報欄に載っていた。
曰く、東芝は「HD方式をサポートしてくれる企業が増える意味で歓迎す るが、当社が併用機に取り組む意思はない。(略)当社はマイクロソフト やインテルのサポートを受けており、これから優位に展開できると みている」とコメントしている。
もう一方の陣営である松下も、「規格の違いが買い控えを招いていると は思わない。現に当社のレコーダーは販売予定を上回り、増産中」と分 析し、「併用機(の製造)は考えていない。実際、併用機はコスト増が 避けられず、お客様の利益にはならない。(BDが席巻するか否かは)お客 さま次第」と控えめながら自信をのぞかせている、らしい。
うーん、どうなんだろう。
昔、似たような図式でVHSとベータマックスという、ビデオテープの 規格争いがあったわけだけど、その時は、両陣営に分かれた日本のメー カーが激しい競争を繰り広げる間に、欧米の家電メーカーはその争いに ついていくことができずに、家庭用ビデオ市場は事実上、日本企業の 独壇場になった訳だよね。
次世代DVDでも、同様に他の国のメーカーには真似できないような、 高い技術力によって開発することで、日本のメーカーが業界を席巻する ために、今まで何年も前から開発をしてきたと思うんだけど、でも 今回に限っては大きく異なるのは、日本のメーカーが規格争いで揉めて いる間に、さっさと韓国や中国のメーカーが互換機を出してしまうこと で、シェアを奪われる可能性って結構高いんじゃないのかな、と思うの だ。
もう一つ、今回のニュースで思い出すのは、数年前の液晶テレビについ てである。 薄型テレビについても、松下がプラズマテレビを開発し、それに対して ソニーが液晶よりも高品位の薄型テレビの映像技術開発をすることで、 市場のシェアを一気に握ろうと思ったのに蓋を開けてみたら、既存の 技術である液晶の大画面化を低価格で成功した韓国メーカーに一時市場 のシェアを一気に握られた事があったと思うのである。
その後ソニーは急遽(最初はあまり熱心でなかった)液晶ディスプレイの 開発に方針を転換し結果市場のシェアを取り戻すことには成功したが、 同時に低価格争いに巻き込まれることになってしまったと思うのだ。
今回も、たとえ今は両規格を再生できるプレイヤーの値段が割高で 市場への波及力は大きくなくても、数年後には(大量生産と更なる開発 によってコストが下がることにより)、日本のメーカーの思惑とは裏腹 に、両規格が再生・記録できるプレイヤーが出回っている可能性は高い と思うのだ。
それに、今すぐ今のDVDから次世代のDVDに切り替えなきゃいけないほど 現行のDVDに不満があるわけでもないと思うし。 うちはまだ地上アナログしか映らない環境なので、フルハイビジョン 画質が観られる次世代DVDに変えたって、TV自体がそれに対応しなけれ ば、意味ないわけで。
だから地上波が全てデジタルに移行するにあたってTVを買い換えなきゃ いけなくなるまでは、次世代DVDにせよ、PS3にせよ、そんなに購買意欲 はそそられないし、またその頃にはTVにせよ、次世代DVDにせよ、相当 値段は手ごろになっているはずであり。 っていうのが、ごく一般の消費者の考え方なんじゃないかな、と思うんだけど。
だからそう考えると、日本の各電器メーカーは、今強情を張らずに、 数年後の買い替え市場を見据えたら、今からもうすでに両規格の互換 プレイヤーを開発したおいた方がいいと思うんですが。 まあ、裏では当然そうしているんだろうけど。
っていうかそもそも、ブルーレイかHD DVDかなんて意地を張らずに、 統一規格を作ることで合意してればもっと日本企業は優位になった 様なするんですが。 果たして数年後の状況はどうなっているんでしょうか。
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