レプリカントな日々。

2002年11月07日(木) 「モナリザ・オーヴァドライブ」ウィリアム・ギブスン著 1989年早川書房


 本当のご馳走とは、食べて食べ飽きない、食べたあとに体に負担がかからないというか後味すっきりというか、美味しいだの不味いだのを通り越してしまい、後には幸福感しか残らないものだそうで。
 開高御大の受け売りですが・・・。

 小説にもたまーにそんなものがあったりしますね。
 この「モナリザ・オーヴァドライブ」(三部作完結編)もそんな作品の一つだったりします。
 いや、細かいことを言い出せばキリが無いんですけど。
 一昔前に読んだ時には、もう「これだっ!この世界だっ!」と胸が高鳴り「これからはサイバーパンクだぜ、ベイビー」等と全身がヨロコビにうちふるえるものがありました。
 つい最近読み直してみたところ、当時感じていた「尖った」部分というのもほとんど気に障ることもなく、時代を越えて生き残る名作だなと改めて感じました。
 感想は?と聞かれたら。
 黙ってその人にこの本を手渡します。
 「読めばわかる」と。

 サイバーパンクの旗手として登場したウイリアム・ギブスン、1990年前後にこれを書いてしまうというのは、やはり天才です。
 残念ながら現実はまだまだ「そこ」までは行きついていないどころか、サイバースペースは無意味な「掃き溜め」になりつつありますね。90年代初頭、ニフティサーブ以外のネットが「匿名」を諦めた頃の事を時折思い出します。
 ま、それはさておき。
 チバシティは世界の医療センターになり得るのか・・・。
 サイバースペースの実現を見るために長生きしてしまいたくなります。

 「カウント・ゼロ」「ニューロマンサー」「モナリザ・オーヴァドライブ」
 ギブスンのサイバーパンク三部作は「現実と虚構の不確かさ」をエンターテイメントにしたものですが、10年後?に似たようなテーマで作られた映画「マトリックス」も、三部作を読んでから見ると、叉感想が変わってくるかもしれません。
 全てはここから始まったと言い切ってしまっていい三部作です。

 紫色のゴキブリが怖くないあなた、「ニューロマンサー」はもっとお勧め。







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