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■ 月光・・・GL(アー主)
キンと凍てついた夜の空気の中、月の光を全身に浴び佇む 細身の青年を見つけ男は小さく息を吐いた。 宿を抜け出す青年の気配に気付き後を追ってきたのは どうやら正解だったようだ。 彼は宿に備え付けられていた白い夜着のまま 上着1つ纏ってはいなかった。
元々自分自身の身体を気遣うという意識が 希薄な青年ではあるがここ・バーンシュタインの冬は 彼が生まれ育ったローランディアとは違うのだ。 アーネストは月光を反射して淡い光を放つ青年に 静かに近付いて行った。
アーネストの気配に気付き青年・ルシファーは ゆっくりと視線を巡らせる。 アーネストにだけ見せる儚く頼りなげな表情。 今にも泣き出しそうなほどに揺らいでいる金銀妖瞳が アーネストを見上げてくる。 ルシファーがこんな表情をする理由を アーネストは知っていた。
今日の時空制御塔での戦い・・・。 それがルシファーを苦しませているのだろう。 原住生物であるゲーヴ達の王・ゲーヴァス。 ルシファーのただ1人の主・ゲヴェルに良く似た存在を 再びその手に掛けた事がルシファーの心にどれだけ負荷を 掛けたか・・・それはアーネストには想像する事しか出来ない。
いつだったかルシファーが言っていた事がある。 月の光には癒しの力があるように思う・・・と。 たとえつらい事や苦しい事があったとしても 月の光を浴びている内に少しずつ癒されている気がする・・・と。 だからルシファーは戦闘後の月のある夜は野外に出たがる。
アーネストは無言で持ってきていた上着でルシファーを包むと そのすっかり冷え切った華奢な身体を抱き寄せた。 アーネストの体温を間近に感じルシファーは安堵したように 小さく息を吐いた。 そして無言でアーネストの背に細い腕を回し胸に顔を埋めた。
哀しいほどの力で縋りついてくるルシファーの髪を梳き アーネストは晧晧と輝く銀の月を見上げた。 その輝きは何処か彼の白銀の異形神を思い起こさせた。
凍てついた大気の中優しい月明りに抱かれ 2人はいつまでも寄り添っていた・・・。
2002年07月03日(水)
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