デイドリーム ビリーバー
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2002年03月09日(土) きらきらりん

最近の小田和正さんの歌の、前奏のはじまりに
「きらきらりん」って音がなるじゃないですか。

あれって、恋の瞬間の音だなあって、ちょっと思った。



片思いだった頃も
恋人になってからも
彼との待ち合わせは、仕事のあとが多い。

何時に終わるか、正確にわからない仕事をしている私は
いつも彼を待たせていて
待ち合わせ場所まで、いつも全速力で走ってしまう。


少し離れた場所から見る彼は、
コートのポケットに両手をつっこんで、駅の柱にもたれていたり。
カフェで、ぼんやり外をながめていたり。
本屋で、熱心に立ち読みしていたり。

早く会いたくて会いたくてたまらなくて、走って
まだ息が弾んでいる私の目に、
私に気付いていない、彼の姿がとびこんできたとき、いつも
ああいいう音が、なっていたような気がする。


恋が愛にかわるのだとか、いろいろ言うけれど
じつのところ、この年になってもまだよくわからない。

ただわかるのは
あの音を聞いただけで、泣いてしまいそうになる私は
今日も彼にやられっぱなしってこと。




でも最近は、彼の姿を遠くから確認するとき
「きらきらりん」よりも
「ほんわぁ」と胸が温かくなることの方が、増えてきた。

「きらきらりん」
は、片思いの頃の方が断然多かったと思う。



そういえば、あの頃。
私のことを好きになって欲しいと、願っていた頃。

雑誌に書いてあったんだか、何だったか。

“二の腕の内側の、くすぐったいところ
 あそこをさわられると、好きになりやすい”

という情報を手に入れて。

何の根拠もなさそうだけど
でも、ちょっとわかる気もする、と思った私は

「あっち行こうよ」って言うときに、
さりげなくさりげなく、そこにふれるようにしたりしていた。


“非常事態に隣り合わせた男女は、ドキドキを勘違いして
 恋に落ちやすい”

なんて言うから

じゃあドキドキさせればいいんじゃんって思って
でも一緒にバンジージャンプするわけにもいかないし

しょうがないから、彼が冗談を言うたびに

「もー、なにいってんの」って
彼の左胸、心臓があるところを、

手のひらで
ときどきグーで

バンって叩いていた。


ドキドキしろ、ドキドキしろって思いながら
叩いていた。




実は今でも叩いている。

彼が冗談を言うたび。
ドキドキしろ、ドキドキしろって思いながら。

「ドメスティックバイオレンス女やー」って言われながらも
叩き続けてる。
もちろんそんなに強くじゃないけど。


彼の心臓のドキドキは
もしかしたら、私の手動によるものなのかもしれない。



…いやっ
違います。違います。
彼の心臓のドキドキは、あくまでオートマなはずです。
多分。


でも、叩くのはやめられない。



そして今も、腕を組むとき、さりげなく
彼の二の腕の内側を、さわるようにしています。


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