デイドリーム ビリーバー
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さくらは、儚い花だと思っていた。
私が通っていた小学校は、校庭がぐるりと桜に囲まれていて 満開の桜を見ると、なんとなくあの頃を思い出す。
小学校の頃のノートに、先生からの言葉が書いてあった。
あなたは、とても優しくて、落ち着いたしっかりした人です。
初めて会ったときは「おとなしそうな子だな」と思ったのですが 芯がしっかりしているのでしょう、 1年間、クラス委員としてよくクラスをまとめてくれました。
何人かが一人の子に嫌がらせをして、クラスがいやな雰囲気になっていったときも 宙さんは、流されることなく、みんなと普通に接しながら クラスの空気を気持ちのいいものに戻してくれましたね。
時々おちゃめなことを言ってみんなを笑わせるあなたが 先生は大好きです。
中学生になったら、きっといろいろなことがあるでしょうが 小学校で学んだことを忘れずにいれば、だいたいのことは乗り越えられますよ。 小学校で学んだことは、大人になってからでも結構やくにたつんです。 (本当ですよ!)
まあ、 「褒めて育てる」が信条のような先生だったので、話半分にきくとしても。 それにしても。
絶対この頃のほうが、大人だった、などと思ったりして。
さくらは、あまい色をした、派手なくせに儚い花だと ずっと思っていた。
だからあんまり好きじゃなかった。
だけど「桜の開花予報」がなんで天気予報で流されるのかといったら それは、宴会の日時を決めるためなんかじゃなくて
桜の開花が、春の到来の、正しい目安になるからなんだそうだ。
ほかの花だったら「咲きました」っていう季節ニュースにはなっても 開花予報や開花宣言にまではならない。 ソメイヨシノは、ほかの花と違って、狂い咲きをすることが 少ないんだそうだ。
そして、なぜ、咲く順序が入れ替わって あたたかい地方よりも先に、東京で開花したりするのかといえば
桜が咲くには、寒さも必要だからなんだそうだ。 ちゃんと冬の寒さを感じてからじゃないと咲かないという なかなか頑固な花なんだそうだ。
すぐ散るイメージがあるけど、これも少し違っていて、
咲いたばかりの桜は、めったなことでは散らないらしい。 どんなに風が吹いても、雨が降っても、しつこくしつこく咲き続ける。
そして自分の寿命が終わったときに その時になってようやく 自分から潔く、はらはらと散り始める。
ちょっとかっこいいと思った。 最近の私は、狂い咲きしまくりだから。
ちょっと暖かくなったら、ぱああっと咲いて 次の瞬間に冷たい風でも吹こうもんなら、一気に散って すぐ笑って すぐ泣いて すごくたいせつなことを、見落としてしまうような気がする。 なんだかすごく大切な、真理、みたいなものを つかめなくなっていくような気がする。
恋ってこわい。
「彼からの電話がない」 そういって落ち込む女友達が、私は大嫌いだった。
電話したいなら、すればいいじゃんって思っていた。 「きらわれるのがこわい」って無理するなら つきあっている意味ないじゃんって思っていた。 女友達の愚痴が、大嫌いだった。
「じゃあ、別れれば?」が、口癖だった。
だけど、気がつけば、私は最近、 彼女達と同じようなことで泣いている。
きっかけは、ほんとささいなこと。 彼からのおやすみメールがなかったとか。 …なんじゃそりゃ。ガキか?
その前にどういうやり取りをしてたんだっけ、って 履歴を見てみると なんの盛り上がりもない、淡々としたメールのやりとりだったりして
私に飽きてきたのかもしれない 最近のメールに、笑えるネタが少ないからかもしれない この間、彼の話を途中でさえぎって、話題変えてしまったからかも 前会った時、眉毛がかたっぽ消えてたからかも 最近、腹筋さぼってて、おなかがたるんできたからかも
うざいっておもわれたくない 重い女になりたくない
だけど、ほかの人のこと、一瞬でも考えないで
うぇーん。
はっきりいって、思考回路がおかしいです。 多分、小学生の私にだって笑われます。
でも頭が働かない。 胸のあたりから、ぎゅうぎゅう音を立てて、苦しいのがのぼってきて。
もう、逃げちゃおうかな、とか。 逃げて、いっさい連絡しなかったら 彼は私のこと、いっぱい考えてくれるかな、とか。
愛情いっぱいもらって、まだ足りないのかと怒られそうだけど たりない。 たりないです。
会いたいです。 会ってるんだけど。会いたい。
キスしたいです。 いや、してるけど。だって、今この瞬間は、できない。
だきしめて、だきしめられたい。 今。たった今。
私自身を、幸、不幸にするのは いつでも私自身だけだと確信してきたのに
今の私は、彼の一挙一動によって 最高に幸福な気持ちにも、どん底の不幸にも落とされる。
こんなふうに思ってしまう私は
彼に恋をしてから、絶対確実に、バカになった。
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