あたろーの日記
DiaryINDEXpastwill


2006年11月19日(日) ムーミン。

 旧暦9月29日。
 午前中、図書館から借りてきた落語CDをせっせとiPodに入れて、コインランドリーに洗濯をしに行き、終わるまで古今亭志ん生の『なめくじ艦隊』を読んでいた。
 今日は雨だからコインランドリーの、特に乾燥機が混んでいる。私が洗濯機に洗い物をぶち込んで約40分、脱水が終わってさあ次は乾燥機・・・と思ったけれど、10機近い乾燥機のひとつとして空いていない。どれもぐるぐる回転して・・・と思ったら、私が来た40分前から乾燥し終わって中に洗濯物(毛布)が入ったままのが1機ございまして、どうしようかな、と、一瞬迷ったけど、だいたいコインランドリーで乾燥が終わっているのを1時間近く放置しておくなんて迷惑千万、ちょっとかちんと来たから扉を開けて中の毛布を出して、部屋の隅にある段ボール(そういう、洗濯物を取りに来ない人のものを一時的に入れておくためにあるらしい)にどかっと入れた。そうして、自分の洗濯物を、空いた乾燥機に入れて、コイン投入、さらに、その乾燥機の前に置いてあった、ごみ袋入りの洗濯物も毛布のほうへどかして、乾燥機に寄りかかるようにしてベンチに座って本を開いた。
 すると、私の隣の乾燥機が乾燥を終え、持ち主が中のものを取り去っていくと、私のそばで新聞を読んでいたおじいさんが、部屋の隅に行き、私がさっきどかしたごみ袋入りの洗濯物を引っ張ってきて、空いた乾燥機に入れ始めた。
「もしかして空くのを待ってたんですか、すいません」
「ええまあ(笑)今日は雨だから混んでるねえ」
と、おじいさんは飄々と答えて、洗濯物を放り込んでいる。
 おじいさんは、乾燥し終わって乾燥機の中に取り残されたままの毛布を取りに来ない持ち主にイライラすることもなく、部屋の一角に座ってずーっと根気よく乾燥機が空くのを待ち続けていたのだけれど、私ときたら、おじいさんが、「予約」のつもりでその乾燥機の前に置いておいたごみ袋入りの洗濯物を、持ち主の見ている前で堂々と動かし、しかも中の毛布もどかして、さっさと乾燥機を使い始めてしまったのである。
 ずうずうしくてすいませんでした。
 と、おじいさんのことはそういう話でして、その、毛布の持ち主のほうは、私が乾燥を終えて帰るまで、とうとう現れなかった。

 洗濯を終えて、銭湯に飛び込んであっつーいお湯に浸かり、それから巣鴨駅前の居酒屋鮒忠で、友人と2人、真っ昼間から呑む。彼女とは夏にも昼酒をやりまして、その時は確か、鮒忠に昼から夜まで9時間近く居座ってしまったという、この人と組むと恐ろしい話になります(それはお互い様)。
 しかし、今日はどちらからともなく節制を効かせて、夕方には店を出て、池袋の古書往来座へ。雨の日は古本屋へ行くのもしんどいのだけれど、今日はどうしても、古書往来座へ行きたくなったので。しばらく行ってないのもあるし。誰かと連れだって古書店に入るなんて滅多にないので、なんだか照れくさい感じ(笑)。しかし、そこはお互い本の虫、それぞれ夢中になって店内を回る。早速、欲しかったロバート・ラドラムの『バイオレント・サタデー』(角川文庫)『ホルクロフトの盟約上・下』(角川文庫)を見つけて抱える。『バイオレント・サタデー』は好きな俳優ルトガー・ハウアー主演で、かなり前だけど映画化された。が、本は絶版で、昨日神保町の古書店でも見つけたのだけど、状態がかなり悪く、なのに800円だったので、手を出さなかった。が、今日はほとんど汚れてないのを300円で入手できたので、とても満足。他に、『戯作者銘々伝』(井上ひさし/中公文庫)、『井伏鱒二文集2』(ちくま文庫)『かきつばた・無心状』(井伏鱒二/新潮文庫)を買った。『戯作者銘々伝』は、『ブッキッシュ』2003年10月刊の5号、特集「落語の本あらかると」で、落語作家のくまざわあかねさんが、同じ井上氏の『不忠臣蔵』とともに紹介していたのを読んで、興味を持っていた本。『不忠臣蔵』のほうも読んでみたいので、こちらは引き続きおたずね本として、頭の片隅に入れておこう。『かきつばた・無心状』は、今、新潮文庫では出ていない。絶版というのか、品切れというのか。まったくもう、残念なこってすが、今日見つけたのはとても状態がよい本でした。
 友人も探していた本が見つかったので、お互いほくほく。本好きな仲間と書店に入るのはなかなか新鮮で楽しい経験でありました。ふだんはむっつり1人で廻っているので(笑)棚の背表紙を見てああだこうだ、あんなのもあるこんなのもある、といろいろ言い合って、時間が幾らあっても足りない。
 しかし、それぞれ欲しい本が手に入って満足、夜の予定がある彼女と、ジュンク堂のちょっと手前で別れる。で、私はその後ジュンク堂に吸い込まれてしまった。久しぶりに池袋の書店を廻るような気がする。ジュンク堂も、その向かいのリブロも、閉店時間が延びて、22時になったんですね!これ、すごくありがたい。ちなみに往来座も22時まで。ありがたい。
 ジュンク堂に入ったはいいけど、今日はもう買うのをよそう、と思って、が、雑誌売り場覗いたら、『クウネル』の最新号が出ていたのを見つけて、つい買ってしまう。『クウネル』は久々に買う。今回の特集は読みたいなあと思ったので。「トーベ・ヤンソンとムーミンのひみつ」。ヤンソンの生まれ故郷、フィンランドへの憧憬。それから、童話作家の佐藤さとるさんを訪ねるページもある。佐藤さとるさんの描く子供の絵、幼い頃から何度も眼にして、大好きだった。
 ジュンク堂を出るとき、私の中の少女(ぶわっ)の部分が飛び出してきて、頭の中で、「ムーミン、ムーミン」と繰り返している。ついに、ムーミンを読みたくなった。電車に乗るのに西武百貨店の通路を歩いていたのだけれど、同じフロアにあるリブロを素通りできなかった。文庫売り場で、ムーミンはどこに隠れて居るんだろうとウロウロする。昔、学校の図書館で借りて読んだことはあるんだけど、でも、文庫でもあったよなあ、どこの文庫だったかなあ・・・、岩波文庫にはありそうでない、新潮文庫にもない、ちくま文庫でもないし・・・と、書棚にぶら下がっている各出版社の文庫目録をめくって行く。なるほど!講談社文庫でしたか!!!8冊あるムーミンシリーズの中の、『ムーミン谷の十一月』を買った。さむーい、11月の夜に、ココアをマグカップにいっぱい入れて、膝掛けにくるまりながら読みたいです。
 


2006年11月18日(土) 幸せなひととき。

 旧暦9月28日。
 隣の区の図書館に行き、借りていた落語などのCDを返却し、また借りる。それと、新着視聴覚資料のリストに、好きな噺家の新作が含まれているのだけれど貸し出し中なので、予約もする。
 家から図書館を廻り、ずーっと歩き通しで、神保町を目指す。今週はあまり走らなかったので、せめてもの償い。小石川側から歩いてきて、後楽園と通り、東京ドームをぐるっと回って、何故かウィンズの建物の中を通って近道し、九段下方面へ抜ける。ウィンズ、馬券買う人達でごった返していた。ついでだから何か買っていくかな、とも思ったけれど、どんなレースがあってどんな馬が走るのか、予備知識がぜんぜんないので、やめた。競馬って頭使う。超初心者は迂闊に手を出してはいかん。
 九段下あたりから、神保町の古書店街をずーっと見て歩く。『あばらかべっそん』(桂文楽・旺文社文庫)『千夜一夜物語1』(ちくま文庫)。『あばらかべっそん』は、もともと青蛙房で出したのを旺文社文庫、ちくま文庫でそれぞれ文庫化したものらしい。ちくま文庫のほうは、数年前まで新刊本屋さんで見かけたのに、いつか買おうと思っているうちに姿を見なくなった。古書店に入るたびに探し物リストの中に一応インプットしていたのだけど、ついぞ見つからず。と思ったら、今日旺文社文庫のほうを見つけたというわけです。旺文社文庫はとうの昔になくなっているんだけど、結構味わい深いタイトルのい本多かったよなあ。
 あとは三省堂で、『なめくじ艦隊』(古今亭志ん生/ちくま文庫)『むかし卓袱台があったころ』(久世光彦/ちくま文庫)を。志ん生の『びんぼう自慢』(ちくま文庫)、面白かったので、またそれを期待して。久世さんのは、先日読んだ『美の死』(ちくま文庫)がとてもよかったので、新刊を喜んで。

 夜は近所の居酒屋で、手に入れた本をぱらぱらめくりながら呑む。
 最高に幸せなひととき。

★追記・翌日ネットで調べたら、桂文楽師の『あばらかべっそん』は青蛙房→朝日ソノラマ→旺文社文庫→ちくま文庫の順で刊行されているらしい(私の知り得たところでは)です。青蛙房の本は好きなので古書店で必ずチェックするけど『あばらかべっそん』は見かけたことがないことを考えると入手しづらいかなあ。朝日ソノラマもしかり。古書店で探しやすいのはちくま文庫版のような気がします。


2006年11月17日(金) 『サイレント・ジョー』『夢十夜・文鳥・永日小品』

 旧暦9月27日。
 一昨日からかかって、『サイレント・ジョー』(T・ジェファーソン・パーカー作/搦理美子訳/ハヤカワ文庫)と、『夢十夜 他二篇』(夏目漱石/岩波文庫)を読み終える。
 『サイレント・ジョー』は、ほんとうによかった。面白かった。主人公のジョーは24歳。保安官補として刑務官の仕事をしている。赤ん坊の頃、父親に硫酸を掛けられ、顔半分は何度手術しても残る傷痕で覆われている。5歳の時に、彼を施設から引き取り、愛情ある家庭で育ててくれた養父は政界の実力者。しかし、ある日、誘拐された少女を助けた後、彼はジョーの目の前で、射殺されてしまう。ジョーは父を殺した犯人を挙げるべく動き出すが、それは同時に、亡き父がジョーに隠し続けてきた暗部をえぐり出していくことにもなる。。。というストーリー。様々な人間くさい人間が出てくるが、ジョーの人間としての魅力が、この小説に読み手を引きつけて離さない一番の理由かも。
 漱石の文章は、やはり味わい深い。もう、あんな文章、とうてい真似なんか出来やしない。「夢十夜」「文鳥」「永日小品」。特に「永日小品」の中の「行列」「心」を読んでいると、初っぱなから、漱石の文章の流れるような言葉の連なりに、飲み込まれてしまうような快感がある。息が詰まるようだ。そして、溜息の連続。どの作品も短いものだけれど、読み手を次々とその物語世界へ引っ張り込んで、周りの空気感まで変えてしまう作家の魔術。
 
 
 


あたろー |HomePage