海沿いのリゾートホテル。 ハリウッド映画のようにきらびやかで清潔感に溢れている。 岩だらけの海岸はホテルのプールサイドに続く。
水面に揺れる青い照明を横目に逃げ惑う。 猫科の動物のように岩を飛びホテル脇を音もなく駆け抜ける。 奴は遠くに見える。 けど、解っている。 こっちがどんなに素早く最短距離を走り抜け、彼が鈍重で遠回りをしていても、いつかは追い付かれる。 追い付かれる事の恐怖。 恐怖がさらに脚を加速させる。 奴はホテルの客を襲う。圧倒的な力で千切っては投げ、捻っては潰す。
夢の中で抵抗する術を忘れた僕は途方に暮れ。
青臭さ香る芝生の上にて
犬とフリスビーに興じる男の子 それを羨ましそうに眺める女の子 家族サービス中であろうビールで鼻を赤らめた父親 誰にも聞こえないであろうに顔を寄せ合い お互いの耳に囁きあうカップル 日当たりの良いのベンチに腰かけ鳩に餌をやる初老の男性 据置きのゴミ箱を巡回している清掃員 遠くのビルのそのまた向こうでゆっくり動く雲
それらを眺めながら流れた涙は 木もれ陽のせいだろう
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