午後の玄関前にて。 - 2005年10月21日(金) 今日の午後、隣の家のSばあさんの玄関の前に、 一匹の猫がいるのを見かけた。 出かけようと外に出た瞬間、その猫と目が合った。 汚れて薄茶っぽかったが、きっともともとは白い猫だ。 猫は私がカギを閉める様子をじっと見ていた。 私も猫を見つめていた。 猫には顔に傷がいくつもあった。 どれも長いもので、ひっかき傷のようであった。 それは、痛々しいというより、怖かった。 だって、 その傷がまるで、眉毛のようであったり、 笑った時にできる、口元の笑い皺のようであったり 目の下のクマのようであったりして、顔がやけに人間臭い。 まるで人面猫。 隣のSばあさんの顔にとてもとてもよく似てたのである。 こわっ。 おしまい。 ... ケンカ。 - 2005年10月16日(日) 私は父に似て、すぐカッとなってしまうタチである。 父と一緒に住んでいたころは、 短気もの同士、良く激しくぶつかり合ったものだ。 基本的に性格が似ているから、攻め方、引き方、かわし方 などもそっくりで、なかなか、らちがあかない。 結局は双方とも疲れきってしまい、「まっ、そういうことで!」 とお開きになるのが常だった。 二週間ほど前、旦那とケンカをした。 彼の生活態度に私がキレたのだ。 今日という今日も言わせてもらう、とまくし立てる私に、 時折彼は民謡の合いの手のように、 「そうだね」とか「うん」と、ポツリポツリ単語を言うばかり。 戦況は私に断然有利。「勝ち」は私にあるだった。 ケンカは換気扇の下でタバコ片手に延々と続き、 そろそろ、決めの一手を打たなければならぬと思った私は このセリフで一気に勝負に出た。 「10年間一緒にいて初めてなんだけど、 本当に今回ばかりは顔もみたくない!!」 すると、それまで伏せ目勝ちで話を聞いていた旦那にこう言われた。 「初めてじゃない・・よ・・。この前も・・見たくないって・・言ってた・・」 ニヤッと上がり気味な彼の口元には「してやったり」感が漂う。 お父さん。こういう場合、次はどうしたらいいですか? おしまい。 ... 実録「そうだったのか・・」 - 2005年10月15日(土) この前、旦那とマンションの説明会に行った時のことである。 まず初めに、担当者からの全体説明があり、 それが終わると各家族、司法書士と個別の打ち合わせになった。 私たちのテーブルに現れたのは、とてもそんなお堅い仕事を しているとは思えないような可愛い女性。 和気あいあいと話は終わり、席を立たって歩いてゆく彼女の後ろ姿を見ながら、 旦那がふ〜と息を吐き、こっちが聞いてもいないのに、こう言った。 「びっくりしたよ〜。前の彼女にすごく似てたからさ〜」 「へっ?」 びっくりしたのは私の方だ。何故なら、彼が今まで付き合った女性は 写真などで顔も全員知っているつもりだったからだ。 「あんな人、君の元カノにいた?」と聞くと、 「うん、大学の時に付き合っていたやつかと思った。違ったけどさ〜」 「ウッソ〜、私知らないよ〜」 「うん、だっておまえには話してないもん」 彼が言うには司法書士の女性の顔は、 まさに16年の時を経た「元カノ」の顔と、想像の範囲で ピッタリ一致するのだという。 だから、胸の名札の確認だけに意識が取られ、話の間中、どうやら 気もそぞろだったらしい。(なんだと〜〜〜!?) さらに、彼はまたまた聞いてもいないのにこう続けた。 「ちなみにさ〜、その付き合ってた子って、おまえと同じ名前、同じ字」 私は再び驚いた。 「じゃあ、私と付き合い始めた時って、私の名前を呼びながら、 その彼女のことが頭をかすめた?普通かすめるよね?」 「うん、思いっきりかすめた」 「ハハハ、そりゃそ〜だよね〜」 結婚して10年も経ったからそんなふうに笑えたが、 もし、付き合い始めの頃だったら、この私のことだ、 「ひどい・・」などと言いながら、細い肩を(当時はまだ細かった) 震わせながら、泣きじゃくっていただろう。 それにしても、人間と言うのはなんてお喋りなんだろう・・と思う。 「不都合があるから」と一生懸命、過去を隠していても、 あるきっかけで堰を切ったようにペラペラと話してしまう。 「ハァ〜、疲れた〜」と伸びをする彼を見ながら、 私も気をつけなくっちゃ、と思った。 おしまい。 ...
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