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■■ 殯の森
2007年05月30日(水)
カンヌ国際映画祭で審査員特別グランプリを受賞した河瀬直美監督の『殯の森』(もがりのもり)が昨日テレビで放映されていたので観てみた。子どもを事故で亡くした若い介護福祉士と、33年前に妻を亡くしてグループホームに住む認知症の老人が主人公。二人とも最愛の人を亡くして以来、生きている実感もなく生きてきている。そんな二人が、老人の妻が眠る森の中で一夜を明かし、時間をともに過ごすうちに徐々に心を通わせ、魂の再生を果たす。感情が突き動かされるような強いものではなく、感情がじわじわと体中に染み込んでいくような感じ。うなる森、風の音、蝉の声、スイカ、田んぼや茶畑がとても効果的に使われていて、土の匂いや汗のにおい、空気の湿度が感じ取れるような、とても情感に満ちた美しい作品だった。
河瀬監督の受賞コメントが印象に残った。
「映画を作ることは、生きるとこと同じくらい大変なことです。生きていると、たくさんの困難や辛いことがあって、途中でたじろんだりつまずいたりすることもあります。そんなとき、人は、自信や強さを取り戻すための何か、奥深いものを探すのだと思います。強さ−それはお金や車や洋服のように目に見えるものじゃなくて、風だったり、光だったり、古い思い出だったりしますが、そんな拠り所を見つけたとき、人は一人で立って、前に進んでいくことができるのだと思います。」 (Festival de Cannesから引用部分の訳)
『殯の森』はそんな河瀬監督の思いが詰まった映画だった。
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