きまぐれがき
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混乱してしまい平常心でいられないのが、サーシャの細胞診の結果だ。 黒に近いグレーだと言われた。 右手にできた膨らみが肥大してきたように見えたので、1週間前に 獣医に連れて行き、診てもらったのだった。 ドクターからの説明を訊いていると、私自身が私を離れてどんどん遠ざ かっていき最後には消えてしまいそうな、おかしな感覚にとらわれた。 今その感覚は、胸の中で不安という大きな塊となって居座ってしまって いる。
そろそろ別れの準備をしておきなさい、と云うことなのだろうか、そんな 考えがふと頭をよぎると、もうだめだ。 立っていることすら出来なくて、うずくまってしまいそう。
普段はまったくそこにあるのも忘れているような、ベッドヘッド側の壁に かけられた十字架のイエズスを手にとって、ぼんやり眺めている傍で、 サーシャのつぶらな瞳が私の手元を見つめている。
今日は七夕。あの二人の逢瀬は叶っただろうか。
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