きまぐれがき
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2003年07月24日(木) |
職業のなせる業か........ |
母のところへ往診にみえたドクターが、2階からの階段を下り しな、踊り場の壁に掛かっているポスターを覗きこむようにして、 しばしご覧になっていらした。 「ドクターは演劇がお好きなのかな?」と後ろからついて下り ながら思ったが、いくらなんでも今そのような話をすべきでは ないだろうと、黙っていた。
そのポスターとは、ご贔屓のピーター・ブルック演出の『ハムレ ットの悲劇』。 パンフレットが作られていなかったこともあり後々まで忘れない ように、琵琶湖ホールへ観に行ったおりに買ってきたものだ。
ハムレットはエイドリアン・レスターだった。 人種の異なる役者を当てた配役と、アジア色が漂う衣装や小道具、 そして音楽も印象的な舞台だった。 シェイクスピアのテキストでは冒頭の台詞を、最後にもってきたり、 「To be, or not to be, that is the question.......」は 思いがけない場面で呟かれていて、そこも気に入ったのだった。
ドクターをお見送りしてから、ポスターの前に行ってあらためて マジマジと見てみる。 寝台ではなく絨毯のようなものに寝かされている父王の亡骸を 取り囲んで、主な出演者たちが座っている構図。
ははん〜 そうかそうか。 この寝かされている父王の姿に、ドクターは職業柄思わず反応して しまったのではないだろうかと気づいた。 「なんなんだ、この男は。どうしたのだ、この男は。」 「脈を計らなければ」。
そういえば、ポスターに目を留めるやピクリとされてから 見入っていらしたように感じたもの。
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