きまぐれがき
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2004年09月07日(火) デパートの紙袋に入れた大金

ヘルパーさんがいらっしゃるのを待って、台風接近で雲がどんどん北へ
流れて行く空を見上げながら、銀行へ行く。
世間一般的にはたいした額ではないだろうが、私にしてはちょっと大き
な金額の動きがあるのだ(笑)
振り込まれた額を引き出して、現金のままとある所へ支払いに行くだけ
のことなのだが、なんで支払いが振り込みじゃないのだ。
夫は「ぼんやりしていて落とすなよ」と言って出勤して行ったけれど、今
までに見たこともないような札束を持っていると思うと震えるではないか。
それにしても、この金額が私の口座に留まっていたのは、わずか数時間
のことだったわね〜

落としていないか何度もバッグの中を確認していると、あの油壷夫人の
大騒動を思い出して来た。
油壷夫人が株を売って、家の購入資金の一部に充てると言っていたさ
中のこと。

あの方は、袋に入った1000万ちょっとの現金をデパートの紙袋にドサ
ッと無造作に入れて、デパートで買い物しがてら、上へ上へと昇って行
った階の公衆電話に置き忘れてしまったのだ。
何故、そんな大金を持ってデパートをふらついたりするのかねぇと、この
話を聴きながら思ったことについては、ふらついてしまうところが油壷夫
人なのだから仕方がないと、すぐに打ち消した。

まだ携帯電話を持っていない頃だったので、デパートのフロアーの隅っこ
にある公衆電話で、たまたま思い出した用事のことで友達に電話をしたと
言うのだ。

「そんな時って、持っていた紙袋は床に置いて、両足で挟むじゃない」

ええっーー私はそんなはしたないことしませんよ。
ましてや大事なものが入っているのなら、手から離したりしません。

話し出すと長い油壷夫人は、この時もあれこれと話し込み、時間が経つ
うちに、紙袋に大金が入っていることなどは頭から消え去り、しっかり
両足で挟んだつもりでいた紙袋は、いつのまにか靴の先で触ってみたり
離してみたりしているうちに、あろうことか電話機が乗っているカウンタ
ーの奥の方に追いやってしまうという、信じられないことを行っていたの
だとか。

「そういうことってあるでしょ?」

ない!ない!
やっと電話を終えた時には、紙袋の存在そのものがなかったことになって
いて、なんの不思議もなくその場を離れた、と言われても。。。。。馬鹿。

紙袋がないことに気がついたのは、デパートを出たところの地下鉄のホ
ームでだった。
それからというもの、

「焦りまくる気持ちが己の身体の数メートル先をどんどん走って行っちゃ
うし、足は身体について来ないし、この分離した状態、わかる?」

わかる。

生きた心地なく公衆電話の場所に辿り着いてみると、置き去りにされた
紙袋は大金が入ったまま、油壷夫人に足げにされた形跡を残して、カウ
ンターの下の奥の方でグチャっとだらしなく、主の迎えを待っていた。
「みんな不審物だと思って近寄らなかったのかしら?」と言った油壷夫人
に、どこまで呑気で抜けているのだ、と呆れたけれど、あながち間違って
いなかったのかもしれない。
ちょうどオウムが起こした地下鉄サリン事件の後のことだったのだから。


さて私は、きれいさっぱりと支払いを済ませた後、書店に寄って平積み
されている村上春樹の「アフターダーク」を確認だけして、よしよしと帰っ
てくる。
あれ〜買わないの?、
この間、予約してまでは買わないと言い切ったのに、他の本を注文するつ
いでに、Amazonに予約してしまっているのだ。
もしかしたら書店に並ぶ前に手元に届かない?そんなことを期待していた
のだけれど。
なんだ、いち早く読みたかったのではないのか。私。

Amazonから届くのは明日だというから、結局書店で購入した方が早か
ったのね。
しかし、かつてのように春樹の新刊をまだかまだかと待って、手にする時
のいそいそとした気分にはもうなれない。。。。。。自分だって人だって、
変わっていくのだ。

 


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