きまぐれがき
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2005年05月04日(水) |
おちおち休むこともできません |
梅田からタクシーに乗ると、行き先を言い終えるのを待っていた かのように運転手さんは 「38度線知ってる?」 と訊いてきた。 なんなんだ!どうしたんだ!この人? 個室に二人きり、感じ良くしておかないと恐ろしいことになって しまうのだろうかと思って 「はい!ソ連が北から攻めてきて、アメリカが南から攻めてきて、 バーンと出合ったところのことでしょうか?」 にっこり笑って答えてみた。
これが間違っていたのか、それからが大変だった。 橋の爆破の話だとか、虐殺の話だとかを延々と訊かせてくれる のだ。 今度は戦時中の満州でのことらしい。 運転手さんは、その時代にはまだ生まれていなかっただろうとい う年恰好なのに、見てきたかのように話し、そしてそれらの事件 の首謀者は私だと言わんばかりに憤慨するのだ。
もうにっこりしてはいられない。 話がわからん、相づちをうてない。
運転手さんを落ち着かせるには、私がその頃のことでたった 一つだけ知っている話を訊かせてあげるしかないと思い 「うちのおばあちゃん、甘粕大尉っていう人から青酸カリが入った 宝石箱のようなものを貰ったことがあるんですって」 と言ってみた。
「ほぅ〜」 一瞬、運転席が輝いてもっと聴きたいモードの運転手さんの後姿。 「それっきゃ知りません」 ここはきっぱり終えておく。
「甘粕ね。ラストエンペラーの坂本龍一ね」
やっと映画の話に移ったかと、ほっとしたのもつかの間、 関東軍だとか満州国だとか、自国の歴史についてあやふやであるが 為に、車の中でとうとう私は戦争末期についての歴史授業の生徒と なってしまった。
なぜこうなっちゃったのかと今考えてみると、あの運転手さんは 客待ちの間中、右翼の街宣車ががなりたてているのを訊かされて、 どうにも納得のいかない部分の鬱憤を街宣車にぶっけたかったの に、怖くて言いがかりをつけられない。 そんなところに客が乗った。 ははは〜手ごたえのない客で悪かったね;;
☆庭の花々☆
コデマリ。
テラスに絡みついたジャスミン。
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