思考過多の記録
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2012年02月06日(月) |
「羅城の蜘蛛」終わる |
初の外部脚本・演出のELEGY KING STORE公演「羅城の蜘蛛」が終了した。 お陰様で毎回大入りで、僕が客席から本番を見られたのは、7回中1回だけだった。 評判も上々で、役者も脚本もかなり高い評価をお客様からいただいた。 僕の芝居をずっと昔から見てくれている大学時代の友人達も、 「今回の芝居が今までで一番よかった」 と言ってくれた。
確かに、これまで僕が関わってきた芝居で、完成度が最も高かったといっていいと思う。 僕は常々、 「仕事の片手間で芝居をやっているつもりはない」 と言っているのだが、ある意味今回の舞台で漸くそれを具体化できたというか、証明できたのではないかと思っている。 客席が満杯だったのは勿論、お客様の集まり方の早さ(開演1時間前のロビー開場時に、既に複数のお客様がいらっしゃっていた)、アンケートの回収率の高さ、そして、アンケートや直接話を聞いた感触でのお客様の満足度の高さ、どれをとっても胸を張っていい結果だったと思う。
一方、少し複雑なのは、これが僕が主宰である演劇ユニットFBIの公演ではなかったことである。 つまり、僕はELEGY KING STOREという土俵があってやっていたわけであり、キャスティング一つとっても僕の意思や力は反映されていない。それは、エレジーという団体やその主宰の人の力であり、僕はそれに乗っかっていただけである。 脚本にしても、素材はエレジーが決め、プロット作成は主宰と共同、実際の脚本は主宰と遣り取りしながら進めた。演出的なことも然りだ。 つまり、僕自身の「趣味」を前面に出さず、相手の意向を尊重しながら作っていった結果なのである。 友達曰く、「職業作家」的な位置に徹した結果である。 それを一概に悪いことだとは思わない。いや、これが一応の成功を収めたことで、むしろ今後の僕の創作活動の方向性を決めるようなエポックメイキングな公演になったのかも知れない。しかし、そうであればある程、僕は自分の力の限界を意識せざるを得ないのである。
自分の演劇的な「趣味」がなかなか受け入れられないということを逆照射したような、そんな何とももやもやした感じが残った。 手放しで成功を喜べない。正直に言えばそんなところだろうか。 ただし、これが成功していなければ、エレジーさんに迷惑がかかることになったし、僕自身、さらに創作に対する自信を失っていただろう。 その意味でも、胸中は複雑である。
しかし、いずれにしても、一つの芝居が終わった。 一つのことの終わりは、新たなことの始まりを意味する。 今回の芝居に関わってきたこの2ヶ月余りを振り返りながら、そこから得たものは自分の糧として、僕はまた進んでいかなければならない。 考えようによっては、今回のことは「棚ぼた」のようなものである。 柳の下に2匹目のドジョウはいないかも知れないが、別の柳の下に移動すると、その下には別のドジョウがいることも考えられる。 少なくとも、次の芝居で、今回の芝居より評価を落とさないようにしたいが、それには、実はもう一つのぼた餅や2匹目のドジョウを狙っていた方がいいのかも知れない、と思ったりもするのである。
今回、この芝居に関わる機会を与えてくれたELEGY KING STOREさんとその主宰の伊智さん、そしてこの芝居で出会った全ての人達に感謝したい。
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