”BLACK BEAUTY”な日々
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2006年05月23日(火) コップ一杯の情熱

昨年の春、Thrill Freaksが解散を迎えた後、私の心から「バンド」という3文字が急激に離れていった。音楽を聴くあるいはCDを購入する機会は皆無に近くなり、スタジオ、ライブのない週末に違和感を覚えつつ、読書に没頭する日々が続いていた。

かつてバンドによって実現してきた私の表現への情熱は私に一編の小説を書かせた。クオリティーの有無はともかく、「何かを表現したい」という欲求は依然、私の心に残っている事を知った。こうして、私は再びバンドにおける表現に回帰することをぼんやりと思いはじめた。

ところが、この日記で紹介した通り、私の表現欲求が実を結ぶにはかなりの時間を要し、また精神的疲労をも蓄積させていった。
同時に私の心の中にはある葛藤があった。
それは「もしかしたら私は最早、バンドで表現する情熱など、とうに失ってしまっているのでないか」という疑義の念だった。
かつて、私の心の中のコップには、バンドへの情熱が溢れんばかりに注がれていた。ところがこの時期コップの中には、わずか数滴の情熱しか残っていなかった。

難航を続けるメンバー探しの中で、情熱を維持していくのは想像以上に私の心を苦しませた。妻子を持つ35歳の男であれば、情熱を注ぎこむべきは仕事、あるいは家庭の平穏であり、バンドへの情熱はいわゆる青春の1ページとして心の中に大切に保管しておくのが正論ではないかと思った。

そして、ようやく最終のメンバーが決定した。私のコップには情熱が一滴づつ、そしてゆっくりと注がれていった。

最終メンバーでの最初のスタジオの前日、エルカホンのライブを観に行った。彼等の音楽にはコップ一杯に注がれた音楽への情熱が確かに存在していた。そして、情熱を維持していこうとするメンバーの強靭な意志がボーカル、ギター、ベース、ドラムから発せられていた。
私の目には気がつけば涙が溢れていた。
客席は激しいモッシュが繰り広げられ、演奏が乱れる場面もあった。
しかし、そこには喩えようのない美しさがあった。それは「カッコイイ」とか「興奮した」といった類のロックバンドの常套句を遥かに超えた珠玉の空間だった。

私の音楽への情熱は今、この瞬間もゆっくりと、そして確実に蓄積されている。そして情熱を持ち続ける事は決して間違いでは無い事を確信している。

エルカホンのメンバーに心から感謝の言葉を送りたい。

「ありがとう。またスタジオで会いましょう」






JIN |MAIL TOThrill freaks offcial web.

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