NORI-☆
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地上の星
午後5時15分。 しかかりの仕事が定時内に片付くかどうか目算して、ちょっと急がなくちゃ…なんて思っている頃合である。 携帯が鳴る。 「HOME」…息子が学童館から帰ってきたらしい。 「もしもし、ママ?」 「サト?おかえり。今日も暑かったね」 「ママ、今日『プロジェクトX』借りてきてね!」 「…あ、うん。大丈夫。借りてあげるから…」 「青函トンネルのやつだよ」 「わかってるって(笑)」 「忘れないでね!」 「はいはい…(^^;)」 「じゃあねっ!」 …ま、便りがないのは無事のしるし、なので、言いたいことだけ言ってさっさと切るというのは、いやなことがあったり落ち込んでいたりしていない証拠ではあるのだけれど…(笑) 5分後。また携帯。 「HOME」…今度はなんだ? 「ママ、あのペン見つけたよ!」 「ペン??ああ、ホワイトボードのペン?あったの? (そんな報告は帰ってからでいいって…(^^;))」 「あったよ〜サト、見つけたよ!」 「ほんと〜それはありがとう。」 「うん。じゃあね」 「じゃあ留守番よろしくね(切るからね。仕事しなくちゃ…)」 「…ママ?」 「なに?(あと30分で仕上げなきゃいけないんだけど…)」 「青函トンネルのビデオ借りてね!」 「ん、わかってるって(さっきも約束したじゃないか〜(--#))」 「…ママ?」 「なに?(こんどはなんだ?!)」 「…何度も電話して悪いね」 「(プッ…)どういたしまして」 最後の台詞がおかしくて、電話を切ってなお笑っていると、「何?お子さんから?」と同僚に聞かれた。 今のやり取りを話すと、大人な会話だね〜と大受けした。 「しかし『プロジェクトX』のビデオとは渋いですねぇ」 …確かに。。。 しかし、事実今サトシが一番楽しみにしているのは、プロジェクトX第一期ビデオ10巻を、毎週水曜のTSUTAYAのレディースディ(半額)に1巻ずつ借りて見ることなのであった。 ちょっと前に、ビデオの販促のためか、このシリーズの再放送があった。 夜9時台という放映時間は、わが家ではもっともドタバタしている時間帯なので、これまで私も子供たちも観たことがなかったのだが、たまたま「執念が生んだ新幹線」という回の再放送のとき、夫が気付いて録画してサトシに見せたのがきっかけだった。 テーマが鉄道・飛行機であれば、バラエティだろうがドキュメンタリーだろうが何でも夢中になって観るサトシのことである。 新幹線のできるまで、と聞いて大喜びして観始めた。 世の中高年サラリーマンを感動させ奮起させたというこのシリーズの内容を、一年生の頭脳と感性がどのように受け止めているのかはよくわからないし、必ずしも集中して観ているとも思えない態度なのだが、それでも飽きもせず何度も見たがり、ときどき細かい内容について質問してきたり、思いがけないところで番組で聞き覚えた技術的な話題を引き合いに出してきたりして驚かされる。 彼なりに自分の経験や知識と結びつけながらかなり直感的に理解して身に付けているのだろうか。 次回予告がたまたま「黒部ダム」のテーマで、以前“立山・黒部アルペンルートとトロッコ列車の旅”で行ったことがあったので、興味を持って続けて録画した。 サトシの祖父は土木技師で、技術者としての賞賛はもちろん、建設に関わった人々を直接知っていたりもするので、黒部ダムにはいろいろな思い入れがある。 わが家の黒部行きの際にも、サトシに色々と壮大な物語を語り聞かせてくれており、そのおかげで、乗り物とは直接関係ないテーマでも、サトシはすんなりシンクロすることができたようである。 こうして、サトシは小学生一年生にして、「プロジェクトX」のファンになった。 レンタルビデオが出ていると聞くや、「TSUTAYA行こう、行こう!」のコールがすさまじい。 「あの〜、プロジェクトXのビデオはどこでしょう?」 とレンタル店慣れしていない母におずおずと聞かれた店員は、よもや手をつないで立っている6歳の子供が、そのビデオの借り手であるとは思わなかっただろう。(あれは普通、オジサンが借りるもんだよねぇ?) 初回レンタルが「翼はよみがえった−国産旅客機YS−11 (1)」。 次が「同 (2)」。 飛行機好きとしては当然のことながら、 何度も繰り返して観ては、すっかりYS-11ファンになった。 そして3回目が今日である。 ビデオの巻末に盛り込まれた全十巻の宣伝を観て、次に何を見たいかしっかり決めているのである。 乗り物テーマではなく「青函トンネル」がいいという。 彼なりに、困難を乗り越えて大きな目標に挑戦する人々、というこの番組のメッセージをちゃんと受け止めているのかも知れない。 朝から何度も念押しされ、夕方2回も電話で確認され、駅についたら更に駄目押しの電話が入った。(わかったっちゅーにっ!) そんなに観たがってもらって、制作者も本望だろう。 そんなわけで、台風が首都圏を通過した日、母は大きな保育園バッグを肩にかけ、雨に濡れながら、弟の手を引いてビデオ店に駆け込んだ。 希望どおり「友の死を越えて−青函トンネル24年の大事業」を手にして、レジに向かおうとすると、ヨシキが母のすそを引っ張った。 「ヨシくんもかりる〜。ヨシくん、これにする!」 ヨシキの小さな手には、 「海底ロマン!深海6500Mへの挑戦−潜水調査船・世界記録までの25年」 がしっかりと握られていた(^^;) ニイニの影響力はすごい。。。
2002年07月10日(水)
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