第八話 〜土と友の人〜 - 2003年08月10日(日) この住家に欠かせないアイテムはいくつかある。 皆が心地よくなる為のもの。 その一つが ‘器’ 陶器で出来たケーキ皿や、カップ達は ある人の所で生まれている。 実はこの住家ができる前から私はその陶芸教室に行っていたので 先生であるその年も近い彼とは友人だった。 ここからそんな遠くない場所で、看板も出さず もう何年もやっている。 自宅の地下に掘ったボロボロの小さな教室は なんだかやっぱり‘秘密基地’みたい。 雑然と土やバケツが並び、傾いた棚には生徒さん達のや 彼自身の作品が危なっかしそうに並んでいる。 そして、時々通る電車以外 窓のむこうには畑と奥にある森しか見えない。 私はここが大好き。 教室の合間の3時には、 みな形や大きさの違うカップにお茶っ葉を直接ばさばさ入れたら そこにお湯を注いで、葉が下に沈んだところで飲む。 小さくFMラジオから流れる音楽を聴きながら ほこりっぽい土の香りと共にブレイクする・・・ さらに、 自分の習う時間も曜日も決まっていないので 好きな時に行く。 作るものが決められていないので、 勝手に好きなものを作る。 こっちから何かを聞くまでろくに教えてもくれないので、 無意味な時間も多い。 こんな教室をやっているのだから、やっぱり不思議な人なのだ。 ぶっきらぼうな言い方をするのだけれど、本当はすごく気を使う そんな人。 何を考えているか全く分からないけれど、本当はいつも一生懸命 そんな人。 こんな彼が創る作品は、色や素材はシンプルだけど ちょっと変わった形の物や 手作りっぽさが溢れた作品ばかり。 作り手の顔を知っている器を使えるというのは とても贅沢なような、嬉しい気分。 でも、友人の私としては 「こんなんで結婚できるのかしら・・・」 などど、ちょっと心配だったりもしているけれど。 けれど、ずっとこうして心地のよい無意味な時間や 自分自身そのものを創造できる喜びを教えてくれる、そんな場所と 彼らしい世界であり続けて欲しいと思う。 これから彼はまたこの住家にどんな器を創ってくれるのか楽しみだ。 また今日も一人こう言った。 「ここのお皿は素敵ね」 ってね。 -
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