「直ぐに取れるやろけど、あのみどりの缶じゃなぁ」
UFOキャッチャーが意外と得意だということが判明したゴリさんのヒトコト。
既に100エンでイチゴガムのでかい箱を取っているから もうこれ以上菓子は要らないよと思いつつも
ゴリさんが狙っているブースの前に立ってみる。
スーパーとかで安く売られているクッキー缶詰。
青と、赤と、茶色の3色。
2段重ねになっているバタークッキー缶は青、一番奥だ。
みどり、という単語をもう一度反芻してみる。 こんなときに、ゴリさんが色盲であったことを思い出す。
どの色を、緑に見えているんだろう。
一番とりやすい場所にある茶色の缶だろうか 少しとりにくい場所にある赤色の缶だろうか
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シャンパンの栓を包んだピンクの銀紙から 剥きやすいように飛び出ている 赤いセロハンが見えずに苦心していた。
そんな夜のことをふと思い出す。
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誕生日プレゼントは白いワンピースと紺のキャミソールだった。
私が洋服や寝巻きを入れているボックスの中に、 新しい小さなボックス、其れを空けたら、私が始終見ていたぬいぐるみと メッセージカードと、ワンピースとキャミソールが出てきた。
ワンピースにはベルトがついていて。 それに紺色のラインが入っているから、 中に組み合わせられるキャミソールの色は自然と限られてくる。
雑誌の影響か、売れてるモデルの影響か、解らないけれど 紺色のキャミソールは、 私も白シャツと組み合わせたくて探したけれども 見つからなくて断念していた。
何処も品切れ状態だったから。
そんな事情など勿論知る由もないゴリさんも、 ショッピングモール内を探し回ったらしい。 片っ端から店に入って、店員さんの怪しむ目をはらいのけ。 一目散にキャミソールを探したらしい。
こともなげにそんな事を話していた。
ただ、見つけるのが大変だったよ、それだけ。
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洋服を買うときに、「此れは何色?」と聞いてくる。 ゴリさんには、微妙な色の違いが解らないから。
ライトにすかして、グレー?黒?とか 紺?黒?とか。
緑の缶と言ったときに、すぐに思い出すべきだった。
いや、プレゼントを空けたときに思い出すべきだったのかもしれない。
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一人実家で風呂に入っているときに。
そういえばアイツ、紺色を探し当ててたけれども。 それってもしかして、店員に色を聞いたり すかして色を食い入るように見たり、
たった一枚のキャミソールなのに 実はものすごく苦労したんじゃないのか?
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