戯言 目次|過去|未来
けどあたしは もう子供ではなかったから 駄々をこねることも 泣き喚くことも できなかった あたしは これが欲しいと それを言う事すら出来なかった あの時 もしあたしが 手を離さずに居たなら 諦めずに居たなら 今なにかが変わってたのかな 離れていくことは 初めから決まってて けど それでも隣に居て 少しだけあたしより 大人だった君に あたしは追い付こうとして 大人の振りをしたんだ 離れていくこと 物分りのいい振りをして あたしは 「うん。」 その言葉を口にするしかなかった 本当はどうしても欲しかったのに 本当はどうしてもここに居て欲しかったのに きっとあたしが あの時 駄々をこねたとしても 泣き喚いたとしても 君は行ってしまっただろう 状況は今と何も変わらないだろう けれど 本当は欲しいんだって その言葉を口に出来ていたなら 変わっていたものはある 今 ここに在る 大きな後悔は きっとここには 無い 本当は欲しかった 本当は離れずに居て欲しかった 「これが欲しい。」 その言葉が言えず 手を引かれていく子供のように あたしは 大人の振りをした 子供で 時間という存在に 手を引かれ続けながら 何度も何度も 後ろを振り返る あれが欲しいと 心の中で 諦めきれずに けれど もう手に入らないことは 言葉をのみ込んだ時点で 気付いてた
藍音
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