詩のような 世界
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誰も知らない海岸 気丈な母猫のあくび 電線を避けて ふわり漂う白い風船
とても静かだけれど 何も聞こえないわけじゃない 斜め下から目線を外さず歩く少年 人差し指で飛行機雲をなぞる少女
打ち上げられた傘だった錆びた骨たち 鳴くことも忘れ 砂浜の一日を見守るかもめ とても静かだけれど 何も聞こえないわけじゃない
小雨の朝 少女が傘を差し出すと 少年は濡れるままに顔を上げなかったこと 傘を残して走り去る少女の後姿が消えるまで じっと見ていたこと
かわいい花柄の傘を海に流したのは 許してほしいと願ったから
少女の残骸を拾い集め 胸に刺さるほどぎゅっと抱きしめる とても静かな朝だったけれど ちゃんと聞こえていたんだ
地面に落ちる雨音さえも
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