詩のような 世界
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この頼りない人差し指で 現在という地点にいる僕には到底見えない遥か前方を
バチッ
熱いいいいっ 焼け焦げたにおいにむせ返る まだ早すぎたのか
気を取り直して食事 お気に入りのランチョンマットは洗濯中だ ランチョンマットに乗せた皿に乗せた食べ物しか食べたくない なぜかって、なぜかって、 1度要らなくなってしまったら 2度と使わなくなるだろうから そのうちにランチョンマットの存在すら忘れるだろう しまいには皿がまだ洗い桶の中だからとか言って テーブルに豚の生姜焼きを並べるようになるよ
それでよいかと問えば 絶対によくない テーブルに豚の油やタレがこびりつく どんどん汚れていく 毎回台拭きできれいに拭き取れば問題なし? と、あの頃の僕は根拠のない余裕で笑っていたんだ
においはだんだん消えなくなる 肉汁は台拭きを食いちぎり始める 生き生きしていたテーブルはゆっくりと死んでゆく 足元に残った屑の山を呆然と見下ろし 「なぜ?」 「いつの間に?」
という涙の結末が脳裏をよぎったので とりあえず濡れたままのランチョンマットを 慌ててテーブルに敷いた、瞬間
バチッ
火花が散る まだまだ熱そうだ
冷める前に 冷めてしまう前に
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