詩のような 世界
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透明な小さい男の子は
諦めを含んだ無邪気な笑顔を残して
赤く燃える火柱に入っていった
誰かを疑うことが嫌いだったから
愛したことなんてなかった
徐々に色を失ってから気づいた
その過ちに
街中を見渡すと
透明人間はあちこちにいた
まだ遅くはないよ
渦巻く炎に身を焼かれながら
少年は叫ぶ
こんなに熱く裂かれそうな痛みだなんて
かすれていく声は飛び交う雑音に消された
すべてが崩れ落ちた瞬間
小走りのOLが降り積もった灰の辺りを振り返った
立ち止まり
自分の透けた手のひらを
色の抜けた瞳で見つめた
ふいに身震いしたのは
本当に12月の風が通ったからだろうか
彼女は数分間、まったく動かなかった
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