「あっれー、偶然、なんでこんなトコいんの?」
「…それを言うならオマエこそ、なんで」
「んー、買い物?食料調達ー、みたいな」
「あ、っそ」
深夜2時を回ったコンビニ。
客は俺ら以外にはいなくて、店員は携帯に夢中。
「オマエんち、こっちじゃなくない?」
「うん、そーだよ」
「じゃーもっと近いトコ行けばいーじゃん」
「まぁまぁ気にしない気にしない」
「べつに、気にしてないけど」
…気にしてないなんて言ったら嘘だけど。
お前の突拍子もない行動はいつものことだから。
「あ、これ美味いんだよー」
手に取ったのは、桃のチューハイ。
「…俺酒呑めないんだけど」
「あー、そーだっけ」
美味しいのにもったいねー、って顔でそれを元の場所に戻す。
「……ねぇ、キリト、元気?」
振り向いたお前の顔は、驚いたような顔をしていて、
「……元気?」
息を飲んだのがわかった。
「…うん、元気元気。すげー元気」
「そっか、」
「…うん」
「また、3人で会おうよ」
「うん、」
「また昔みたいにさ、酒でも呑みながら」
「…潤くんお酒呑めないじゃん」
「あー、そっか」
「またでろでろに酔って動けなくなってもいいならいいけど?(笑)」
「まだそんなこと覚えてンのかよ」
「当たり前じゃん」
「お前も人のこと言えないくらい酔ってたけどな(笑)」
「そうだったっけ?よく覚えてンねー」
(だって、大切な思い出だもん)
言わないけど。
言えないけど。
(まだ 好きだなんて)
(なんて女々しいんだろう)
「…じゃ、また連絡するから」
「うん、あ、携帯変わったんだけどさ」
「俺変わってないからまた電話してよ」
「わかった」
「じゃあ」
「うん、―――また、今度」
「おやすみ。早く寝ろよ」
「潤くんこそ人のこと言えないし!」
「(笑)」
「じゃあね」
「ばいばい」
お前が行ったあと、
さっきお前が手に取った、桃のチューハイと、
お前が大好きだった、チェリーの味がするゼリーを買って、
帰り道で、泣いたんだ。
「…まだ好きなんじゃん…」
お前の大好きな味を、思い出した。
あの日は、もう帰ってこないけど。
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