SS日記
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「殺人事件?」
余りに突拍子もない言葉に、オレは危うく口にくわえたポテトを落としそうになった。 目の前に座っている阿部隆也が、大して面白くもなさそうな顔で続ける。
「―殺人事件。続いてるらしいっすね」
それだけ言うと、黙々とナゲットを食べ続けるタカヤに少しだけ呆れた。 コイツは叔父が警官とかで、まだ世間に出回ってない事件も良く知っている。 もっとも本人は興味があるんだかないんだか。 いつも淡々と語るだけだが。
「―それで今日の練習中止になったのか」
納得した様に呟くと、タカヤが無言で頷いた。
今日は日曜日。 いつもの如くシニアチームの練習に集まったのだが、練習は中止で速攻帰された。 空いた時間を持て余して、半ば無理やりタカヤを連れファーストフード店で時間を潰していたのだが。
しばらくはいつ練習を再開するかもわからないと監督が言っていたのが、まさかこういう理由だったとは。
「いつも練習で使ってる土手。 一昨日のはあそこで見つかったらしいですよ。 陸橋の下辺りに、こう手足が切断された死体がオブジェみたいに置かれてたって―」
胃の辺りが熱を持つ。 沸き上がる吐き気に、口元に手を添えた。
― オレ は それ を ?
「元希さん?」
タカヤが訝しげに覗き込む。 柄にもなく、少し焦った表情に僅かに気分が浮上した。
「―こういう話、苦手でしたっけ?」
心配そうに聞く、口調はいつもより子供じみていた。
「苦手じゃねぇけど」 ―興味がないわけでもないけど
「メシ食ってるときにゃ聞きたくねぇな」
なるほど、とタカヤが頷く。
―まったく。 おかげでせっかく買ったてりやきバーガーがマズくなったじゃないか。
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