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2007年03月04日(日)
テレパシーは届かない。





さみしくて、むなしくて、泣きそうで、
Yくんの送別会だというのに、
アルコールの勢いに任せて、ただ騒いだ。


胸の辺りが今にも壊れそうな音を立てて軋んで、
少しでも気を緩めたら足元からも、
自分の内側からも、崩れ落ちてしまいそうで、
そうすることでしか自分を支えてあげられなかった。


その席で1番仲の良いYちゃんが時折、
あたしに向ける心配そうなその眼差しが、
胸の辺りの音をさらに大きくし、
アルコールのペースを上げさせた。


入れ違いでトイレに立ったYくんが、
通路ですれ違う少し手前でふと立ち止まり、
真っ直ぐ歩けないほど乱れていた、
そんなあたしを力いっぱい抱きしめる。


「どーしたの?」


バカみたいに笑うあたしにYくんが、
抱きしめる腕を緩めないまま、言う。


「僕は貴女の心が心配です。」


その一言で、一瞬にして酔いが冷めた。


「気づいてたの?」


「もちろんです。すぐ分かりましたよ。」


半分泣きそうなままYくんの腕の中で、
けらけら笑っていたら個室の扉が開く。


「すりガラスの前でイチャこくなー。
 全部見えてるぞー?
 アタシにもお前を抱きしめさせろー。」


Yちゃんが笑いながら声をかけてきた。


Yくんが照れくさそうに笑ってから、
あたしはYくんの腕の中からYちゃんの腕の中へ移動する。
人の体温ほど安らぐものは、ない。


気の置けない相手だからかもしれないけれど。


みんなと笑っていてもバカやってても、
胸の中ではずっと、呪文のように、
あのひとの名前を、呼び続けていた。


恋しくて、苦しくて、気が狂いそうで。


あのひとに逢えない時間が嫌い。
それでも笑わなきゃいけない仕事が嫌い。
ひきつった自分の笑顔が嫌い。


あたしには素っ気なくても、
今日もきっと誰かと笑っている、
そんなあのひとが、憎い。


あのひとからのテレパシーが聞こえない。