catch A wave
6+9hz
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2007年03月04日(日) ■ |
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テレパシーは届かない。 |
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さみしくて、むなしくて、泣きそうで、 Yくんの送別会だというのに、 アルコールの勢いに任せて、ただ騒いだ。
胸の辺りが今にも壊れそうな音を立てて軋んで、 少しでも気を緩めたら足元からも、 自分の内側からも、崩れ落ちてしまいそうで、 そうすることでしか自分を支えてあげられなかった。
その席で1番仲の良いYちゃんが時折、 あたしに向ける心配そうなその眼差しが、 胸の辺りの音をさらに大きくし、 アルコールのペースを上げさせた。
入れ違いでトイレに立ったYくんが、 通路ですれ違う少し手前でふと立ち止まり、 真っ直ぐ歩けないほど乱れていた、 そんなあたしを力いっぱい抱きしめる。
「どーしたの?」
バカみたいに笑うあたしにYくんが、 抱きしめる腕を緩めないまま、言う。
「僕は貴女の心が心配です。」
その一言で、一瞬にして酔いが冷めた。
「気づいてたの?」
「もちろんです。すぐ分かりましたよ。」
半分泣きそうなままYくんの腕の中で、 けらけら笑っていたら個室の扉が開く。
「すりガラスの前でイチャこくなー。 全部見えてるぞー? アタシにもお前を抱きしめさせろー。」
Yちゃんが笑いながら声をかけてきた。
Yくんが照れくさそうに笑ってから、 あたしはYくんの腕の中からYちゃんの腕の中へ移動する。 人の体温ほど安らぐものは、ない。
気の置けない相手だからかもしれないけれど。
みんなと笑っていてもバカやってても、 胸の中ではずっと、呪文のように、 あのひとの名前を、呼び続けていた。
恋しくて、苦しくて、気が狂いそうで。
あのひとに逢えない時間が嫌い。 それでも笑わなきゃいけない仕事が嫌い。 ひきつった自分の笑顔が嫌い。
あたしには素っ気なくても、 今日もきっと誰かと笑っている、 そんなあのひとが、憎い。
あのひとからのテレパシーが聞こえない。
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