Doritoの日記
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<前文> われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力に待つべきものである。 われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性豊かな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。 ここに、日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本教育の基本を確立するため、この法律を制定する。
この前文に崇高な教育の理想が掲げられています。「世界の平和と人類の福祉」の実現を「教育」に見ているという点は教育者と言う立場のの重要性を感じずにいられません。「普遍的にしてしかも個性豊かな文化」というのはなかなか解釈が難しいですが、おそらく国際的な文脈の中で「普遍的」な文化であるべきだということでしょうか?国際化された社会にうまく溶け込める柔軟性を持つべきだ、と言うことだと思います。現代社会の文脈の中で考えるとそういうことになるでしょう。 この教育基本法が制定されたのは大戦後の昭和22年(1947年)、日本が打ちひしがれて社会的に不安定な時代でした。そのときに、日本の建て直しを教育に見出そうとしたのです。今の日本の情勢をみると、この試みは多かれ少なかれ成功したと見ることが出来るでしょう。敗戦国から今や世界を引っ張る存在までになりました。教育基本法の元で教育を受けた人々が1970年代に入って日本建て直しの重要な役割を果たしたことは言うまでもありません。 教育基本法はアメリカの占領軍の押し付けによって出来たものではなく、日本側から出来たようです。もちろん司令部の許可は必要としたようですが、当時の文部大臣だった田中耕太郎を中心とする関係者たちが自発的に草起・立案し、制定しました。日本国憲法をはじめとするほかの法律はアメリカの意思に拠るところが大きいことは否めませんが、教育基本法だけは日本側から積極的に作られたものであると言ってよさそうです。安倍健二氏はこう回想しています。
「当時わたしは文部省の調査局におりまして、この教育基本法の仕事をやっておりまして、またかたわら教育委員会法とか教育公務員特例法などの仕事をしておりましたが、ほとんどがアメリカ側の書いたものを直すという形で作業が進められたのでございますが、教育基本法だけは全く日本側がつくったものであります。もちろん司令部のOKを必要としたものでございますけれども、向こうからこういうものをつくれと命令されてつくったのでもなく、全く日本側の意思に基づいてつくられたものでございます。」
教育基本法は軍国主義からの脱出の指針となるものでした。従来の画一的・特権的な教育システムは軍国主義に陥りやすく、平和的なものとはいえませんでした。新しい教育観の根底に流れているのは「平和」です。僕はこの考え方には大いに賛成です。しかしながら、現在のイラクへの自衛隊派遣問題など、最近はこの教育基本法に掲げられた「平和」の理念が残念ながら崩れていっているように思えます。日本の弱さはやはり国際情勢に左右されやすい立場にあることだと思います。世界の文脈のうちに成り立っている国家です。そのなかでもアメリカはなんといっても無視できません。日本の悲しいところですが、認めなければならない事実だと思います。
「真理と平和を希求する」人間を育成していくことが今まさに求められているのだと思います。教育者に課せられた使命はどうやらそんなに簡単なことではなさそうです。
(参考web http://www003.upp.so-net.ne.jp/znet/Education/edulaw-art10.html)
<第1条>(教育の目的) 教育は、人格の形成を目指し、平和的な国家および社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値を尊び、勤労と責任を重んじ、自主的精神に満ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。
<第2条>(教育の方針) 教育の目的は、あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。この目的を達成するためには、学問の自由を尊重し、実際生活に即し、自発的精神を養い、自他の敬愛と協力によって、文化の創造と発展に貢献するように努めなければならない。
<第3条>(教育の機会均等) 1.すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであって、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。 2.国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由にって就学困難なものに対して、奨学の方法を講じなければならない。
<第4条>(義務教育) 1.国民はその保護する子女に9年の普通教育を受けさせる義務を負う。 2.国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料は、これを徴収しない。
<第5条>(男女共学) 男女は互いに敬重し、協力し合わねばならないものであって、教育上男女の共学は、認められなければならない。
<第6条>(学校教育) 1.法律に定める学校は、公の性質を持つものであって、国又は地方公共団体の外、法律に定める学校法人のみがこれを設置することが出来る。 2.法律に定める学校の教員は全体の奉仕者であって、自己の使命を自覚し、その職責の遂行に努めなければならない。このためには、教員の身分は尊重され、その待遇の適正が期されなければならない。
<第7条>(社会教育) 1.家庭教育及び勤労の場所その他社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない。 2.国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館等の施設の設置、学校の施設の利用その他適当な方法によって目的の実現に努めなければならない。
<第8条>(政治教育) 1・良識ある公民たるに必要な政治的教養は、教育上これを尊重しなければならない。 2.法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治的教育やその他政治的活動をしてはならない。
<第9条>(宗教教育) 1.宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない。 2.国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。
<第10条>(教育行政) 1.教育は不当な支配に屈することなく、国民全体に直接に責任を負って行われるべきである。 2.教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するために必要な諸条件の整備確立を目標として行わなければならない。
教育基本法万歳です。日本の教育がよりよい方向に向かうことを願うばかりです。
Dorito
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