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『哲学の教科書』
著者の中島義道氏のことは全然知らないが、略歴を見ると、一般向けの哲学書をいくつも書いていることがわかる。フツーの人に語りかけることに慣れているのだろう、入門とはいえ哲学書らしさを感じないで、読み進められる。
哲学は往々にして単なる「知識」に堕しがちだけれど、この本を読んでも「知識」で武装するのは難しい。でも、この本には<どうやって考えを積み重ねるか>というお手本が沢山紹介される。つまり哲学って考えることに取り付かれた人に与えられた道なんだ、ということがわかった。
メメント・モリに始まり、消去法的に哲学の扱う分野が浮き彫りにされ、さまざまな哲学的な問いかけと思索の道筋が語られる。それが中心。あとは哲学の有用性(否定されるのだが)、哲学者という人たちのこと、哲学書のことに触れて終わりとなる。こうやって一冊の構成を書き出すと、ああ、これは教科書だ、という気がしてくる。哲学者の名前や流派(?)が羅列されるわけではないけれど、おぼろげながら哲学というものを感じることが出来るから、よく出来た「教科書」なのだ。暗記する部分がほとんどないから、教科書のように思えないけれど、やはり教科書だ。
終わりに出てくる哲学入門書のリストも魅力的。「問題意識のない人にとっていかなる書もおもしろくはない。いかなる書も良書ではありません。」という厳しい言葉もついてくる。確かに哲学って見栄で「覚える」ものではないさそう。(講談社学術文庫)
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