優雅だった外国銀行

tonton

My追加

35 戻った家族的雰囲気
2005年07月02日(土)

労働組合の騒ぎが治まって間もなく、総務で権力をほしいままにしていた藤森氏が退社することになった。 彼は悪い人間ではない。 どちらかと言うと勢力的に銀行の為に、従業員の為に良かれと思う事をどんどんやろうとした。 しかし、常識不在以上に皆に嫌われたのは、彼の信ずる神モレオン氏の言うこと以外を無視したことであったろう。 モレオン氏の居なくなった東京支店で、藤森氏は孤独であった。

日本の銀行を定年退職して監査として勤務していた厄介物の老人林氏も、こちらは自主的にではなく退職した。 企業の空気というものが、小人数に依ってこれほど歪められていたものかと感じるほど、支店内の空気が和らいだ。 謙治は、東京支店が健康になったことを嬉しく感じ取った。 「藤森の代わりを、ミスター角田にしようと思うが、お前はどう思う?」 ジュリアン氏に聴かれた。 大柄な角田氏は、謙治より2・3才年下であったが、他人の意見にじっくり耳を傾ける事の出来る穏やかな性格の持ち主で、謙治が信頼出来る数少ない人の1人である。 有名私立大学を出て邦銀の外国部に勤務し、海外支店にも籍を置いていた。




BACK   NEXT
目次ページ