永遠の半神...楢原笙子

 

 

羊水#6 - 2006年07月31日(月)





わたしは無言のままバッグを受け取った。


悪いいたずらでもしたみたいに、
彼の顔をまともに見ることができなかった。
ただ
早くそこを離れたかった。
からからの池の中で、わたしが濡らした場所だけが、
つやつやと黒っぽく光っていた。


わたしは黙って歩き出した。
折角近づいたふたりだったのに、
全てが台なしになってしまった気がして悲しかった。
そして、なんだか自分に腹が立った。


ごめん・・・


なのに
後ろから歩いてきた彼が言った。


(なんであやまるの?)


何も言わないと、
彼を責めているみたいになってしまうと思いながら、
自分をあの場所に、
引き戻さないで済む言葉が見つからなかった。
わたしはただ黙って、
雑木林の中の道を歩いた。


彼が小走りに近づいて、わたしの肩に手を掛けた。


怒ってる?


(そうじゃない、そうじゃないの)
わたしは下を向き首を横に振った。


そして、肩に触れた彼のぬくもりを、
なんだか疎ましく感じていた。
来たときのあの華やいだ気分は遠く、
今日をもう一度、
最初からやり直せたらいいのにと思った。













↑エンピツ投票ボタン

My追加



-




My追加

 

 

 

 

INDEX
past  will

Mail
エンピツ