月鏡〜はじまりのこと〜 - 2008年06月25日(水) 彼とわたしは同じ職場にいた。 彼は営業 わたしは庶務という名の雑用だったが 営業には数人にひとり 事務担当がついていたので 仕事上の絡みは僅かだった。 彼を意識しはじめて どれ位経ったろう。 いつものように定時で仕事を終え 駅の改札に向かったとき その先に彼の姿を見た。 ドクンと心臓が鳴った。 いつもの限られた空間じゃなく 雑多に見知らぬ人が混じるなかで その後姿だけが くっきりと浮き出るように見えた。 彼が階段を上り ホームを歩いて行くのを どきどきしながら追った。 近づきたい。 その気持ちが喉元から溢れてきそうで 彼が足を止めたとき 思わず声を掛けていた。 お疲れ様でした。 たったひと言。 けれどもその中には ずうっと温めていた 彼への想いが詰まっていた。 わたしから彼への ほとんど最初の矢印に 彼はあの時 気づいていたのだろうか。 -
|
|