2006年06月18日(日)
遊び人レスぺクト /// 哀しみを知りたい
大阪中央郵便局前 / 06.06.16
土曜日は詩をつくる方々に会いました・・・。
かつて新潟に市島三千雄という優れた詩人がいたそうです(明治40年〜昭和23年)。生涯に二十一篇しか詩を作らず、作れず、夭逝した、そうです。
詩 / by 市島三千雄 ──
ひどい海
雨がどしや降つてマントを倍の重さにして、 しまふた つめたい雨がいっそう貧弱にしてしまふた 波がさかさまになつて 廣くて低い北國が俺のことを喜ばしていゐる
臆病なくせにして喜んでゐる なんと寂しい。灰色に日がついて夕方が來た ら俥が風におされて中の客はまたたく間に 停車場に來た 貧弱が一里もちよつと歩んでしまうたら 靴に水が通つて氷るようで 貧弱が泣きさうになつてひどい海からの風を 受けなければならなかつた おつかないおつかないと北國をこはがつた 白いペンキが砂に立つて。その燈台がたほれ さう── 日本海が信濃川を越えた 漁獵船の柱が河上へ走った あれもこれも貧弱に北の冬に負けてゐる その内俺は泣いてしまつてあやまつたあやま つたと風にお許しを願ふた うすい胸が風に壓搾されて死ぬよな氣持ちが俺 を一層と弱蟲にさせた
北國は殺すとこだと自らに故郷をいやがつた 貧弱に貧弱に痩せてぼんぼん泣いてしまふた。
大正14年 / 日本詩人、2月号より
なにもしないうちにじかんばかりがすぎてゆく。
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