カゼノトオリミチ
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2016年12月14日(水) 雨上がりの太陽のさす午後



師走の駅から吐き出され

急ぎ足でそれぞれの路地へ

流れてゆく人の波間に

母が ちらりちらり

見え隠れした



目を凝らしその姿を

しっかりとらえようと

するけれど

ベージュの好きだったフラノのオーバーと

あの茶色い首巻であることは

瞬時にわかって

母の表情は

はつらつとしていて



背筋を伸ばし優しく輝きながら

こちらへ歩いてくるようで



もう一度目を凝らすと

もういない



雨上がりの太陽のさす午後の

道の遠くに

儚い記憶が

にじんで

消えました








natu